研究課題/領域番号 |
25800045
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松尾 信一郎 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40599487)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 微分幾何 / ゲージ理論 / 四次元多様体 / スカラー曲率 |
研究実績の概要 |
今年度の目標はウーレンベックのアプリオリ評価を定量化することであり,そのためにヴァイツェンベック公式について多面的に考察した.その目標まではまだ到達していないが,搦め手からの副産物としてサイバーグ=ウィッテン方程式についての結果を得た.特に,サイバーグ=ウィッテン方程式とスカラー曲率から定まる山辺不変量についての共同研究に関する論文はMathematical Researh Lettersに受理された.より詳しくは次の通りである.ヴァイツェンベック公式と部分積分公式を組み合わせることで,その解のモジュライ空間がコンパクトになるような偏微分方程式を導出する系統的な方法を確立した.その具体例として,ディラック作用素のヴァイツェンベック公式からサイバーグ=ウィッテン方程式の摂動が得られる.さらに自己双対形式のヴァイツェンベック公式と組み合わせることで,微分幾何への応用という観点からはより強力な摂動方程式が得られる.また,シンプレクティック多様体ではタウベス=ブレアー接続とシンプレクティック形式によりサイバーグ=ウィッテン方程式の解が自然に得られ,さらにその自然な解が唯一の解であることはタウベスの結果である.上記のヴァイツェンベック公式により導出される摂動は,シンプレクティック多様体上でのタウベス=ブレアー接続による解の構成を,一般の多様体に拡張すると捉えることもでき,実際,今回の摂動によりタウベスの結果の新しく簡単な証明が得られる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画とは違う方向性だが,サイバーグ=ウィッテン方程式とヴァイツエンベック公式についての根源的な結果を得たから.また,サイバーグ=ウィッテン方程式とスカラー曲率から定まる山辺不変量についての共同研究に関する論文はMathematical Researh Lettersに受理されたため.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,研究計画に従い,ウーレンベックのコンパクト化を,バブルとエネルギーの関係を定量化することにより,精密化する.まずはヴァイツェンベック公式による曲率が満たすべき加藤型不等式を改善することから始めたい.さらに,その過程で議論に適切な関数空間の設定が析出すると期待している.例えばソボレフ空間では荒すぎて今回の議論には適していないと思われる.インスタントンの貼り合わせ構成のときには,グリーン関数を用いたタウベス型ノルムは,共変微分に関する加藤型不等式と組み合わせることで,自己双対方程式の非線形性の本質を抉り出し,議論を著しく透明にした.このタウベス型ノルムをさらに改良したい.また,同時に研究計画の目標であったドナルドソンの予想への反例の構成も同時に進めたい.ドナルドソンの予想とはインスタントンのモジュライ空間の体積のインスタントン数が大きくなる極限での漸近挙動についての予想であった.例えば,四次元球面において,一点で全てのエネルギーが爆発するような解に漸近する解の列を考えることで,もしかしたらドナルドソンの予想には反例があるかもしれないという感触を得ている.インスタントン数が大きくなればなるほど,インスタントンのモジュライ空間の一番深い特異点は荒れ狂うからである.これは配置空間において点の数が増えるときの特異点の様子と同じである.この反例の構成のためにもウーレンベックのアプリオリ評価の定量化は必要となるはずなので,どちらにせよ,冒頭に書いた計画から始めるつもりである.
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が残ってしまったが,当該年度に無駄なものを買うよりは次年度に有用なものを買いたいから.
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画通りに,旅費と書籍購入費に用いたい.
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