報告者の専門は四次元多様体論におけるゲージ理論であり,ドナルドソン理論とザイバーグ=ウィッテン理論を超越的手法により研究している.特に,モジュライ空間がコンパクトになる機構に興味がある.ドナルドソン理論ではコンパクトではなく,ザイバーグ=ウィッテン方程式ではコンパクトである. 今年度の目標はウーレンベックのアプリオリ評価を解が爆発する極限において定量化することであった.そのためにヴァイツエンベック公式を多面的に考察した.ドナルドソン理論とザイバーグ=ウィッテン理論の双方で結果が出た. まずドナルドソン理論では,インスタントンのモジュライ空間のL2計量について,四次元多様体の自己交叉形式が負定値であるとき,直径の漸近挙動に関するドナルドソンの予想を示すことに成功した.今までは申請者により四次元球面の場合が示されているのみであった.現在,この結果は論文にまとめているところである. 次にザイバーグ=ウィッテン理論では,前年度に引き続き,報告者とその共同研究者により導入されたザイバーグ=ウィッテン方程式の摂動について研究した.今年度は,特に,ディラック方程式の解である調和スピノルの零点の付近の漸近挙動に注目して研究した.その結果として,ケーラー多様体でのウィッテンの摂動とシンプレクティック多様体でのタウベスの摂動について統一的な視点を得て,証明をやや簡略化することができた.しかし,まだ論文にまとめる段階には考察が深まっておらず,引き続き研究を続ける.
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