研究実績の概要 |
平成27年度の主な成果は以下の通りである。 (1)互いにエキゾチックな4次元多様体対を表示する枠付結び目の対の例は散発的なものしかなく、また枠が-1の場合に限られていた。私はコルクツイストの新しい表示方法を開発することにより、そのような枠付結び目対を組織的に構成する方法を与えた。応用として、「2つの結び目が0手術で同じ3次元多様体を生むならば、それらはコンコーダントである」という1978年のAkbulut-Kirby予想を否定的に解決した。成果をまとめた論文を専門誌に投稿中である。 (2)Stein構造を持たないコンパクト可縮4次元多様体の存在問題は4次元可微分ポアンカレ予想と密接に関連する重要な問題である。ところで、枠付結び目で表示される4次元多様体は、枠が最大Thurston-Bennequin数より小さければ、Stein構造を持つことがよく知られている。私は、「この事実の逆は成立しない」、「Stein構造を持たないコンパクト可縮4次元多様体が存在する」の少なくとも一方の主張は正しいことを示した(J. Symplectic Geom, to appear)。 (3) 4次元Steinハンドル体を用いることで、最大Thurston-Bennequin数 (結び目の不変量であり低次元トポロジーに様々な応用を持つ) の新しい決定法を与えた。特に既存の方法では決定不可能と思われる多数の例に対し、最大Thurston-Bennequin数を決定した。応用として、「結び目のLegendre手術で得られる3次元多様体は既約である」という Lidman-Sivekの予想を否定的に解決した(Compositio Math., to appear)。 (4)4次元多様体上のStein構造は5次元オープンブックを経由することで5次元多様体上の接触構造を与える。私はAkbulutとの共同研究で、接触3次元多様体のStein充填の微分構造の違いが5次元多様体上の接触構造に反映されるとは限らないことを示した (主に26年度の研究内容,Math. Res. Lett., to appear)。
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