研究課題
今年度は主にファイ4確率量子場モデルの不変測度に関する研究を行った。この確率量子場モデルは非線形確率偏微分方程式における1つのモデルで、その中でも繰り込みを必要とする難しい問題として、長年多くの数学者が取り組んできたものである。近年Hairer氏の貢献により急速に発展、彼は自身のアイデアを抽象化し正則構造の理論を打ち立てた。その理論は非常に抽象的であるので、従来の確率解析の手法を用いて議論したいというのがこの研究である。その中でも特に、ラフパス理論を用いている部分を確率微分方程式を用いて議論しようというものである。この問題を確率微分方程式の手法によって議論することにより、既存の様々な結果をこの問題に適用できるようになり、その結果この話題を大きく発展させることができると考えている。この研究では特に、確率微分方程式を用いて不変測度についての研究を主に行った。尚、この問題の難しさは無限次元空間を有限次元空間で近似した際に、係数が発散するような確率微分方程式の列が現れる部分であり、その際にマリアヴァン解析に現れるウィーナーカオスの計算を行っている。この研究は現在も継続中である。また、解析半群の理論を用いたマルコフ半群の強フェラー性とレゾルベントの強フェラー性の関係についての研究も行った。これまで確率解析学において解析半群の理論を用いるという研究はあまりなかったが、マルコフ半群が解析的であるという条件の下ではマルコフ半群とレゾルベントの強フェラー性の間に明確な関係があることが分かった。解析的な良いマルコフ半群に対しては既に結果が得られているが、現在はどのようなマルコフ過程の枠組みでこの議論を行うことが適切かを考えており、今もこの研究は継続中である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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