今年度では、分数冪ラプラシアンを持つ確率Burgers方程式に関する確率エントロピー解の構成、比較定理、大偏差原理、及び確率反応拡散方程式に関する解の振る舞いの研究を行った。
1. 分数冪ラプラシアンを持つ確率Burgers方程式について考察した。まず、分数冪ラプラシアンの指標が二分の三以下の場合には、前年度では確率エントロピー解を導入し、適切な状態空間において解の一意性を示した。今年度では、その状態空間で、近似確率方程式を導入し、その解の緊密性を示し、確率エントロピー解の構成に取り組んできた。次に、ガウスノイズで摂動された分数冪ラプラシアンの確率偏微分方程式の比較定理の研究を行い、さらに、反射壁を持つ分数冪確率偏微分方程式に関する解の存在と一意性を論じた。最後に、ガウスノイズが加わった分数冪の確率Burgers方程式に関わるFreidlin-Wentzell型と解の占有時間についての大偏差原理を考察した。なお、大変偏差原理を考察するとともに、その方程式の解に関するStroock-Varadhanのsupportの問題を調べた。
2. 有界領域上の確率反応拡散方程式に関する解の長時間の振る舞い、ノイズの興奮度、間欠性を考察した。このような確率偏微分方程式は放物型のAndersonモデルやKPZ方程式との深い関わり研究が知られており、さらに物理学において興味深い間欠性に関連しているので、多くの研究者の注目を集めている。今年度では、実数の有界区間上のDirichlet境界条件を満たす確率熱方程式について安定性や間欠性を中心として議論した。解の長時間挙動、微分作用素の固有値とノイズの強さとの関係を明らかにし,ノイズの興奮度が4であること証明した。なお、多次元領域上の確率反応拡散方程式に関する解の長時間の振る舞いと間欠性などの確率的性質を考察した。
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