研究課題/領域番号 |
25800061
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大野 博道 信州大学, 工学部, 准教授 (90554585)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 量子情報理論 |
研究概要 |
量子状態を観測する場合,観測には正作用素値測度が用いられるが,観測により量子状態の情報を完全に知ることができ,かつ最も効率の良い正作用素値測度として,SIC-POVMが知られている.量子状態の情報の一部が既知であるときは,量子状態の情報を完全に知ることができ,かつ最も効率の良い正作用素値測度として,条件付きSIC-POVMがあるが,条件付きSIC-POVMについてはまだ分かっていないことが多く,特にその存在や構成方法などの研究が求められている. 本年度の研究では,いくつかの特別な場合について,条件付きSIC-POVMを構成し,その存在を示した.また,条件付きSIC-POVMが存在するための必要条件の一つを見つけることに成功した. 条件付きSIC-POVMについては,既知である情報をどのように設定するかにより,非常に多くの例が考えられ,その例一つ一つに条件付きSIC-POVMが存在するか考察する必要がある.本年度の研究では,いくつかの重要であると考えられる例について,条件付きSIC-POVMを構成した. また,SIC-POVMなどの性質の良い正作用素値測度の存在を考える際,必要となるパラメータの数が多くなるため,存在をしないことを証明することが非常に難しい.これまでの研究でも存在しないことを証明された問題は数えるほどしかない.しかし,今回発見された必要条件を用いて,いくつかの場合について,条件付きSIC-POVMが存在しないことが証明された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的であった,条件付きSIC-POVMの複数の例の構成に成功しており,また,条件付きSIC-POVMが存在するための必要条件についても一つ求めることができた.さらにこの必要条件を用いて,条件付きSIC-POVMが存在しない例があることも証明できており,研究は順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度はいくつかの条件付きSIC-POVMの例を構成したが,他にも重要と思われる例が残っており,来年度以降はそれらについても考察をしていく. また,今回求めた必要条件を満たすが,条件付きSIC-POVMが存在しない例についても考察し,よりよい必要条件や必要十分条件についても研究を行っていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
必要となる図書が当初の計画より少なかったこと.また,リプリント代が不必要だったことにより,繰越が生じた. 本研究では,研究協力者との議論の場を多く持つことでより深い研究が行えると考えている.そのため,研究協力者のいる大学等への出張費として,国内旅費・外国旅費に経費を多く使用する. また,多くの数学者からの意見や情報を得たり,情報交換を行うため,学会や研究集会に参加し,研究発表を行う予定であり,その出張費として経費を使用する.当初計画したもの以外に,本研究と関連のある学会や研究会があるため,繰越分についてはそれらへ参加するための費用とする. これに加え,研究のために必要な作用素論や量子情報理論の関連図書を購入する予定である.
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