研究実績の概要 |
量子状態を観測する場合,観測には正作用素値測度が用いられるが,観測により量子状態の情報を完全に知ることができ,かつ最も効率の良い正作用素値測度として,SIC-POVM(対称完全正作用素値測度,symmetric informationally complete positive operator valued measure)が知られている.しかし,量子状態の一部の情報が既知であるとき,SIC-POVMを用いて観測を行なうと,既知である情報を二重に得ることになるため,無駄が生じる.すなわち,一部の情報が既知であるときには,SIC-POVMは最良の正作用素値測度にはならない.そこで考え出されたのが,条件付きSIC-POVMである.条件付きSIC-POVMは,既知である情報に応じて得られる最良の正作用素値測度である. 本研究では,条件付きSIC-POVMが存在する必要条件の一つと,いくつかの例を構成,考察し,2015年10月にQuantum Inf. Process., Vol.14において,共著論文「Examples of conditional SIC-POVMs」を発表した. 本年度の研究では,量子情報理論と関わりの深い量子ウォークについても研究をおこなった.特に,量子ウォークのユニタリ同値性とSzegedyウォークに関する研究をおこない,ユニタリ同値により不変である量子ウォークの性質と,Szegedyウォークになるための必要十分条件を明らかにした.また,これらをまとめた論文「Unitary equivalent classes of one-dimensional Quantum walks」をQuantum Inf. Process., Vol.15において発表した.
|