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2016 年度 実施状況報告書

HNN拡大を通した軌道同型の研究

研究課題

研究課題/領域番号 25800063
研究機関東京大学

研究代表者

木田 良才  東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (90451517)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2018-03-31
キーワード測度付き同値関係
研究実績の概要

測度付き同値関係とその充足群の間には密接な関連がある. 実際, 充足群の抽象群としての同型類から同値関係の同型類を復元することができる. 一般に充足群は中心の元で非自明なものはもたないが, 中心的な振る舞いをする列は存在しうる. このような中心列の研究は同値関係を理解する上で重要な役割を果たし, ある中心列の存在が, 同値関係の代数的な性質である安定性を特徴付けることが知られている. 同値関係が安定であるとは, それが直積の下で超有限同値関係を吸収するときをいう. 今年度は, 安定な同値関係の中心拡大が安定になるかどうかを調べ, 同値関係が群作用の軌道同値関係であって, 中心拡大がその群の中心拡大からくる場合に, 肯定的な結論を得た. より正確には, 安定同値関係Rの2-コサイクルで可換群に値をもつものに対し, Rの適当な拡大をとることにより, その2-コサイクルが自明なものに近づくことを示した. 自由な群作用でその軌道同値関係が安定になるようなものが存在するとき, その群は安定であるという. 上記の結論により, 安定な群の任意の中心拡大もまた安定であることが従う. 過去の中心拡大に関する結果と併せると, 中心拡大の群が安定であるための特徴付けを, その中心群を用いて記述することができる. 他の応用として, 群の安定性が virtual isomorphism の下で保たれることが示される. これらの事実は, 将来, 群の安定性の研究において基本的な役割を果たすものと期待している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

群の安定性の問題において, 無限の中心をもつ群を考察することは最初に取り組むべき課題である. なぜなら, 群が安定であるためには, その群が内部従順であることが必要であり, この条件以外に一般の安定群に対する必要条件は知られていない. 無限の中心をもつ群は内部従順群の典型例であり, これがいつ安定になるかが明らかになれば, それは一般の場合の研究における指針を与える. 今年度の研究成果は, 無限の中心をもつ群に対する問題の解決であり, この意味で研究は順調に進展しているといえる. 一方, 一般の内部従順群については, その構造で理解されている部分は未だ少なく, 引き続き, 具体例を通しての研究が必要と考えている.

今後の研究の推進方策

群の内部従順性が群の基本的な操作の下で保たれることを見るのは, 安定性と比較すると易しいことが多い. そこで, 内部従順性が保たれる操作の下で, 安定性が保たれるかどうかを調べることが問題になる. もしそのような操作で安定性が保たれることがわかれば, それは安定性の特徴付けに向けた重要な情報になる. たとえそのような操作で安定性が保たれないことがわかったとしても, そのことから安定性に対する新しい障害を見出すことができる. 今年度は, 中心拡大をとるという操作についてこの問題を考察し, 肯定的な結果を得た. 内部従順性が保たれる他の操作として, 可算群Gのある正規部分群Nがあって, Gの共役によるNへの作用が強い従順性をもつとき, N上の内部共役に関して不変なミーンがG上のそのようなミーンに持ち上がることが知られている. この場合にも, Nが安定ならばGも安定であることが期待される. これは中心拡大に対する今年度の結果を含む. このような群Gの興味深い例として, 可算集合への従順作用からできるリース積が挙げられる. この種の群は多くの具体例を含み, 近年, ある群の従順性に関する別の文脈で重要な役割を果たすことが明らかになってきている. このような具体例を通して, 安定性の研究を進めていきたい.

次年度使用額が生じた理由

大学での業務により, 当初予定していた出張を取りやめたため.

次年度使用額の使用計画

日本数学会をはじめとする国内の研究集会への参加費用に充てる.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 6件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] University of Iowa(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Iowa
  • [雑誌論文] Primeness results for von Neumann algebras associated with surface braid groups2016

    • 著者名/発表者名
      Ionut Chifan, Yoshikata Kida, and Sujan Pant
    • 雑誌名

      International Mathematics Research Notices

      巻: 2016 ページ: 4807-4848

    • DOI

      https://doi.org/10.1093/imrn/rnv271

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Inner amenable groups, stable actions, and central extensions2017

    • 著者名/発表者名
      Yoshikata Kida
    • 学会等名
      The second Australia-Japan Geometry, Analysis and their Applications
    • 発表場所
      Kyoto University
    • 年月日
      2017-01-30 – 2017-02-04
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Questions around stable equivalence relations2016

    • 著者名/発表者名
      木田良才
    • 学会等名
      作用素論・作用素環論研究集会
    • 発表場所
      前橋工科大学
    • 年月日
      2016-10-09 – 2016-10-11
    • 招待講演
  • [学会発表] Stable actions and central extensions2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshikata Kida
    • 学会等名
      The 9th MSJ-SI, Operator Algebras and Mathematical Physics
    • 発表場所
      Tohoku University
    • 年月日
      2016-08-01 – 2016-08-12
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Inner amenable groups, stable actions, and central extensions2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshikata Kida
    • 学会等名
      Rigidity School, Nagoya 2016
    • 発表場所
      Nagoya University
    • 年月日
      2016-07-26 – 2016-07-29
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Stable actions and central extensions2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshikata Kida
    • 学会等名
      Von Neumann Algebras
    • 発表場所
      Hausdorff Research Institute for Mathematics
    • 年月日
      2016-07-04 – 2016-07-08
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Stable actions and central extensions2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshikata Kida
    • 学会等名
      Geometric Analysis on Discrete Groups
    • 発表場所
      RIMS, Kyoto University
    • 年月日
      2016-05-30 – 2016-06-03
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 研究者のウェブページ

    • URL

      http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~kida/index.html

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-16  

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