平成25年度は主として以下の2点について研究活動を行った。 1.多次元全空間における、双安定型の非線形項を持つ消散型波動方程式(damped wave equation)の特異極限問題について、反応拡散型方程式(特に、Allen-Cahn方程式)と同様の界面現象が起きることを示し、その結果をまとめて学術誌に論文を発表した。この研究は、パリ南大学の非線形偏微分方程式に関わる研究グループとの共同研究である。方程式に含まれる減衰(あるいは消散)の強さを制御するパラメータをある程度大きくした場合に、放物型方程式の場合と似通ったある種の解の比較定理が成り立つことを示し、これを用いて放物型方程式の解析手法を応用した。界面の形成に係る時間の評価や、特異極限における界面の運動方程式の導出など、概ね、当初の予測通りの結果を得ることが出来たが、細かな評価式の改善、対象となる方程式の一般化など、多少の課題も残されている。研究成果について、国内の研究集会等で口頭発表を行った。 2.空間1次元の場合において、上記1と同様の消散型波動方程式の解の挙動を解析した。Allen-Cahn方程式と本質的に全く同じ1次元進行波が存在することに着目し、その安定性を考察した。上記1と同様に、比較定理を利用して、解が進行波に収束する為に、初期値が満たすべき十分条件を示した。収束レートが示されていないこと、方程式に係る仮定がやや強いことなどが、今後解決すべき課題である。
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