層ポテンシャルの再構成問題は変分構造を有し,与えられたポテンシャルを生成する層(閉曲面)の存在が知られている.一方,逆問題の基本的問いである一意性,すなわち,前述の性質を持つ層が一意に定まるかという問題に対しては,変分構造を定める汎函数が一般に凸であるとは限らず複雑であり非自明である.与えられたポテンシャルが球対称である場合には,最大値原理を用いた移動平面法などの対称性の議論を用いることにより対応する層が一意に定まりそれが球面となることが知られているものの,一般の場合にはそのような議論を用いることが出来ないため,凸性を課すなどの層の形状をあらかじめ指定した条件下でのみその一意性が知られているのみであった.
本研究では,この層ポテンシャルの再構成問題に対し,仮想的にパラメーターを付けた問題の族を考察し対応する層の族が成す“フロー”,すなわち曲面の動きを発展方程式として導き,その力学的性質を明らかにすることで元の問題の解である層の一意性を証明することに成功した.また,その形状の定量的評価についても詳細なスペクトル解析を通して得ることが出来た.
本研究で導入した方法論は楕円型方程式の過剰決定問題などの領域の形状を問う様々な問題に対して有効な一般的なものであり,その広範な応用が期待される.
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