研究概要 |
1次元n×n保存則方程式系の初期値問題の解の存在についての研究を行い, さらに, その解の一意性についての研究を行うための準備として, ある区分的に線形な不連続関数の性質について考察し, その不連続のクラスの分類を試みた. 本年度に得られた研究成果は主に以下の2つである. 1.1次元n×n保存則方程式系の初期値問題の可解性を示す方法の1つとして有名であるA. Bressan (1992), N. H. Risebro (1993)による波面追跡法(the wave-front tracking method)の簡略化を行い, その方法を適用することで十分小さな全変動量をもつ初期値に対する初期値問題の可解性定理をより厳密なものとして示した. (現在, 投稿中である. ) 2. ある区分的に線形な不連続関数の性質について考察し, その不連続のクラスの分類を試みることで, その関数の周期的な性質に関する結果を得た. (現在, 投稿中である. ) 波面追跡法とは区分的に線形(定数)な不連続関数を用いて1次元n×n保存則方程式系の初期値問題の近似解を構成し, その近似解の部分列を(厳密)解に収束させる方法であるため, 近似解の部分列の構成の仕方によっては収束先が一意ではない可能性がある. このような可能性を排除し, 1次元n×n保存則方程式系の初期値問題の解の一意性を示す足掛かりを得るためには, 区分的に線形な不連続関数の性質を考察し, その不連続のクラスを分類する必要性がある.
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