研究概要 |
非線形分散型方程式の1つである非線形シュレディンガー方程式について研究を行った. 特に引力型エネルギー臨界項を含む二重冪型非線形シュレディンガーに対し, 基底状態よりエネルギーの小さい解, および基底状態の近傍から出発した解の挙動を研究した. 基底状態は非線形性と分散性の釣り合いによって生じ, 物理的にも, 数学的な立場から非線形シュレディンガー方程式の構造を理解する上でも, 重要な関数である. 平成25年度は, 研究計画のとおり, 基底状態に対し, 周波数無限大の極限, および周波数が零の極限を考察した. この考察の目的は, 基底状態のまわりの線形化作用素についての情報を得るためである. 実際, 一般的な周波数の基底状態に対して線形化作用素の情報を得るのは現在確立されている技術だけでは不可能であるように思える. そのため, 極限的な状況を考察した. これに対し, その収束と極限関数を示すことができた. 特に, 極限関数は, エネルギー劣臨界単独冪の場合の基底状態である事を示した. さらに, 周波数が小さい基底状態に対し, 周波数零の極限関数(単独冪の場合の基底状態)からの摂動と捉える事により, 線形化作用素のスペクトルに関する情報を得る事ができた. これにより, Nakanishi-Schlagの理論で鍵となる``ejection lemma'', および``one-pass theorem''を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究は計画どおりに進んだが, 研究としては, 未解決の部分もあるため,完成を目指す. その後, 研究計画に挙げた次の課題に進む.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は, 海外出張における滞在費や旅費を先方が負担してくれたため, 経費を抑えられたが, 平成26年度は, 出張の予定はあるが, 先方の負担は期待できないため, 25年度で節約できた分を26年度に繰り越した. 海外出張時の旅費に充てる.
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