研究実績の概要 |
本研究課題の目的は, 非線形分散型方程式に対し, 非線形性と分散性に応じて定まる臨界ソボレフ空間における解の挙動について研究する事である. 特に, エネルギー臨界項を持つ非線形シュレディンガー方程式の研究に対する4つの目標を設定している. 25年度に, 1つ目の目標であった「基底状態に関する調査」を完了し, さらに, 2つ目の目標である「解の挙動の解析」にも着手できた. 26年度は, 「解の挙動の解析」の完了を目指し, 予定どおり結果を得ることができた. その具体的内容を簡単に紹介する:研究の対象となった非線形分散型方程式は, エネルギー臨界冪項と劣臨界冪項の両方を持つ2重冪型の非線形シュレディンガー方程式である. この方程式に対し, ``ポテンシャルの井戸''として知られている集合を拡張し, そこでの解の挙動の解析を行った. 単独冪型の方程式と異なる点の1つは, スケール不変性が無い事である. このため, Nakanishi-Schlag理論の応用に若干の困難が生じたが, 摂動理論や, ポテンシャルの井戸の幾何学的な特徴を詳しく考察する事で, 解決できた. 残念ながら, 26年度中に論文として投稿するまでには至らなかったので, 27年度に結果を投稿したいと考えている. 26年度には, 3つ目の目標であった「エネルギー臨界冪項のみを持つ非線形シュレディンガー方程式の散乱問題」の調査も行った. この問題は空間3次元と4次元の場合が未解決であり, 3次元は特に難しいと考えられている. 26年度に, 空間4次元の問題に関する論文がプレプリントサーバーに投稿されたため検証を行った. しかし, 3次元の場合も含め, まだ研究の余地があるため, 27年度に引き続き研究を進めていく.
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今後の研究の推進方策 |
研究目的に掲げた4つの目標のうち, 2つは解決できた. 解決できた2つの課題も決して簡単なものではなかったと考えているが, 解決のために何をすれば良いかは比較的分かり易かった(予定通りに研究を進められた). 一方, 27年度に着手する研究は, 非線形分散型方程式の散乱問題に関する大きな未解決問題の1つであり, 困難が予想されるが, 出来る限りの時間を研究に費やし, まずは研究計画に沿って, 解決を目指したい. 国内外の研究動向も随時調査し, 解決のための良い方法があれば柔軟に取り入れていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度は, 大学における担当講義の負担増加, 大学運営業務, 夏休みにおける企業向けの数学セミナーを行ったため, 海外出張する時間が取れなかったため.
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