研究課題/領域番号 |
25800077
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
赤堀 公史 静岡大学, 工学部, 准教授 (90437187)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非線形シュレディンガー方程式 / 散乱問題 / 基底状態 |
研究実績の概要 |
引力型エネルギー臨界冪を含む二重冪型の非線形シュレディンガー方程式を考察した。この方程式に対しては、これまでの申請者の研究から、基底状態と呼ばれる対応する楕円型方程式の最小作用解の存在とそれを用いて構成される定在波解の存在が分かってる。 本年度は、この定在波解の軌道の近傍から出発した解の挙動を、Nakanishi-Schlagの最近の研究手法を用いて解析した。 我々の方程式に対してはスケール不変性がないため、各周波数ごとに、基底状態を用いた初期値の集合を導入した。この集合は申請者が過去の研究で用いた集合の拡張になっていて、マスが基底状態と同じ場合には、Nakanishi-Schlagの理論を用いて、解の挙動が9つに分類され、かつ全ての場合が起こる事を証明した。この場合の証明における困難としては、基底状態のまわりでの線形化作用素の性質を摂動論を用いて示す事、および、Nakanishi-Schlagの理論の応用の際に、摂動の議論も考慮した考察が必要になることである。 一方、解のマスが基底状態のマスと異なる場合は、 解が別の基底状態から導入される集合に入る事を証明した。この集合における解の性質は、申請者の研究によって既に明らかになっていたため、解の挙動に関してかなり詳細な情報を得ることができた。 まとめると、27年度における研究の意義としては、単独冪を超えて、より複雑な非線形項に関しても、Nakanishi-Schlagの理論が応用可能である事を実証し、解の挙動を詳細に調べた事である。さらに、マスが基底状態と異なる場合に、どのような状況になっているかを明らかにした事にも意義があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究で平成26年度までに計画していた内容は完了できた。平成27年度の計画においては、ある1つの性質を証明できれば完了する段階まで来ているが、物理的な観点からみた難しさ以上に、数学としての証明が困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に挙げた問題は、非線形分散型方程式の分野では重要な問題である。特に、解決のための議論は、この分野の発展に大きく貢献するはずである。そのため、平成28年度も引き続き研究を続ける。本研究課題の研究期間が残り1年であるため、平成28年度に挙げた課題にも取り組みたいが、まずは平成27年度の課題の完了に全力を注ぐ。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究発表の際の旅費を先方が負担してくれたため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内および海外出張費に充て、できるだけ多くの研究集会に参加したり、研究者と議論する機会を作り、あらたな知識や研究手法の収集を行う。
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