本研究において,研究代表者は,Gelfandの3つ組を用いることで,適当なクラスの線形作用素に対してその一般化スペクトル集合を定義し,その性質を調べた.すなわち,関数空間の3つ組を用いて空間の位相の強弱をうまく制御することで,従来のスペクトルの概念を拡張した一般化スペクトル集合を導入した.特に,スペクトルの分類(一般化固有値/一般化連続スペクトル/一般化剰余スペクトルなど),一般化レゾルベント,一般化固有値に従属する固有空間の性質,固有空間への射影,一般化固有値を用いたスペクトル分解定理,作用素の半群の漸近挙動,などを,通常のスペクトル理論と並列な形で整えた. これにより,偏微分方程式の解の挙動について,従来の手法では捉えることが難しかった現象が理解できると期待される.例えば,通常の固有値ではなく,一般化固有値によって誘導される解の漸近挙動,解の安定性や分岐など,が理解可能となった.特に,結合振動子系やシュレディンガー方程式への応用が今後の課題となる.結合振動子系やシュレディンガー方程式は,物理や工学など応用上も重要な方程式であるため,これらの新しい解析手法が確立されたことには大きな意義がある. 以上の結果により,平成25年度の計画はおおむね達成されたと言える.本研究の結果をまとめた論文は現在投稿中である. また,この結果が評価され、ドイツやアメリカでの国際会議に招待され,講演を行った.
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