本研究において,研究代表者は,ゲルファンドの3つ組を用いた線形作用素のスペクトル理論を構築し,これをシュレディンガー方程式の研究に応用した. シュレディンガー作用素は自己共役作用素のため,典型的には実軸上に連続スペクトルを持つ.研究代表者は,ゲルファンドの3つ組を用いた新しいスペクトル理論を用いると,シュレディンガー作用素のレゾルベントが実軸を超えて下半面から上半面への解析接続を持ち,その解析接続が実軸の外側に特異点を持つことを示した.この特異点を一般化固有値,あるいは共鳴極と呼ぶ.また一般化固有値の座標が方程式の解の減衰の速さを決めることを証明した.これにより,共鳴極の理論の数学的基礎づけが与えられた. また,同様の理論を反応拡散系へも応用した.すなわち,反応拡散系を適当な解のまわりで線形化して得られる線形作用素に同理論を適用することで,ある場合においては,一般化固有値が,古くから知られるエヴァンス関数の零点に他ならないことを証明した.これにより,ゲルファンドの3つ組を用いた線形作用素のスペクトル理論は,エヴァンス関数の理論を特別な場合として含むことが明らかとなった.
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