研究課題/領域番号 |
25800083
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水谷 治哉 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10614985)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シュレディンガー方程式 / シュレディンガー作用素 / スペクトル理論 / 非自己共役作用素 |
研究実績の概要 |
今年度は以下の2点について研究を行った。 (1) Helmholtz 方程式に対する一様評価。2次形式の意味で臨界な特異性をもつポテンシャルを伴う定常シュレディンガー方程式(Helmholtz 方程式)の解(レゾルベント)に対して、エネルギーに関して一様な評価を、ルベーグ空間の一般化であるローレンツ空間の枠組みで証明した。特に、一様 Sobolev 評価と呼ばれる Hardy-Littlewood-Sobolev 不等式の非ゼロエネルギーへの拡張版を、尺度臨界なスカラーポテンシャルを伴う場合に一般化した。さらにこれらの定常問題の一様評価を、時間に依存するシュレディンガー方程式に対する時間大域的挙動の解析やシュレディンガー作用素のスペクトル解析に応用し、特に、ストリッカーツ評価を含むいくつかの時間大域的平滑化作用を証明した。ポテンシャル関数が十分な滑らかさと遠方での減衰度を持つ場合には多数の結果があるが、今回の結果の新しい点は、そのような余分な条件なしで広いクラスの電場ポテンシャルを扱いことに成功した点にある。これらの結果は Jean-Marc Bouclet(Toulouse 大学)との共同研究として行い、国際論文誌に掲載が決定している。 (2) 非自己共役作用素のスペクトル解析。複素数値ポテンシャルを伴う非自己共役なシュレディンガー作用素の固有値について、そのスペクトル半径がポテンシャルの適当なルベーグノルムで評価できることを証明した。特に、固有値全体の集合が複素数面において有界集合をなすことが従う。このような固有値の性質は自己共役な場合には作用素の半有界性と同値であり、古くから知られていたが非自己共役な場合には比較原理が失われることから、特に、ポテンシャルの影響が陽に現れる固有値評価についてはこれまで研究が少なかった。この結果については、論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主要目的であった多様体上のシュレディンガー方程式に対する時間大域的ストリッカーツ評価の証明とその非線形散乱への応用については、前年度までにほぼ予定通りの結果が得られている。本年度は、もう一つの目的であるポテンシャルを伴う場合についても電場ポテンシャルについては一定の結果が得られた。また、その副産物として非自己共役作用素のスペクトル解析への応用についても結果が得られている。従って、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
当初は28年度で終了するはずであったが、2017年6月にマルセイユ(フランス)で開催される本研究課題の内容に関連する国際研究集会「Mathematical aspects of the physics with non-self-adjoint operators」にて研究成果の発表および情報発信・交流を行うために、研究計画を1年延長した。29年度はこの研究集会を含めて、これまでに得られた結果の発表・情報発信および論文執筆を主に行う計画である。研究の具体的な中身については、28年度の結果の磁場ポテンシャルを伴う場合への拡張を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度前半に長期の海外出張を行い、その間に予定していた国内出張および物品購入をしなかったために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度6月にマルセイユ(フランス)にて開催される、本研究課題の内容に関連する国際研究集会「Mathematical aspects of the physics with non-self-adjoint operators」に参加し、これまでの研究成果の発表および情報発信を行うための旅費に使用する。
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