研究課題/領域番号 |
25800089
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
依岡 輝幸 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60432192)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 公理的集合論 / 強制法 |
研究概要 |
(1) 本年度は 1980年代に S. Todorcevic が導入した side condition method の研究を中心に行った。 Side condition method は必ずしも CCC 強制法では不可できそうにない不可算集合を有限近似で付加する proper 強制法のひとつである。Todorcevic はこの手法を用いて「S-space が存在しないことが無矛盾である」ことを示し、この位相空間論における未解決問題を解決した。 J. Zapletal は S-space が存在しないことが無矛盾であるときに用いられた side condition method がルベーグ測度ゼロの集合族の加法性を保存することを証明し、「S-space が存在せず、ルベーグ測度ゼロの集合族の加法性が aleph_1 である」ことが無矛盾であることを示した。本年度、これをさらに発展させ、「S-space が存在せず、ルベーグ測度ゼロの集合族の被覆性が aleph_1 である」ことが無矛盾であることを証明した。証明の最も重要なステップは「S-space が存在しないことが無矛盾であるときに用いられた side condition method がランダム実数を不可しない」ことの証明である。 (2) 1980年代に Todorcevic により導入され、E. Thuemmel により再定義された Todorcevic ordering についても研究した。Thuemmel は「ある Todorcevic ordering は sigma-finite chain condition を持つが sigma-bounded chain condition を持たない」ことを示し、Horn-Tarski の問題に答えた。測度を備えたブール代数は sigma-bounded chain condition を持つので、Thuemmel の与えた Todorcevic ordering は測度を持たない。Thuemmel の結果を発展させ、「多くの Todorcevic ordering は測度を備えた正則部分ブール代数を持たない」こと、つまり「多くの Todorcevic ordering はランダム実数を付加しない」ことを証明した。これは多くの Todorcevic ordering がランダム実数を付加しない新しい CCC 強制法であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、次の2編の論文を執筆し学術雑誌に投稿した。(1) Keeping the covering number of the null ideal small, (2) Todorcevic orderings as examples of ccc forcings without adding random reals. (1) では、「Zapletal の ideal based forcings がランダム実数を不可しない」ことを示し、それより「S-space が存在せず、なおかつ the Lbesgue measure zero ideal の covering number が aleph_1 であることが無矛盾である」ことを証明した。(2)では、「位相空間 X に対して、X が強い意味での hereditarily separable(例えば operably metrizable など)か、Balcar-Pazak-Thuemmel の condition 1 のどちらかを満たせば、X からなる Todorcevic orderings がランダム実数を付加しない」ことを証明した。 以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Side condition method の新しい保存定理をさらに発展させる。 Todorcevic は side condition method を導入したほか、 P-ideal Dichotomy という新しいラムゼイ理論的公理を導入し、「P-ideal Dichotomy が成り立ちなおかつ tower number が aleph_1 より大きければ、S-space は存在しない」ことを証明した。「P-ideal Dichotomy が成り立ち、S-space が存在しないならば、tower number は aleph_1 より大きいか」という問題はまだ解決である。 正しいのであれば、「S-space が存在しないことが無矛盾であるときに用いられた side condition method が P(omega) 上の tower を保存する」ことを証明し、「P-ideal Dichotomy が成り立ち、S-space が存在しないならば、tower number は aleph_1 より大きいか」Todorcevic の問題を否定的に解決したい。
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