研究課題
本研究の目的は、相対論的ジェットと周囲のガスとの相互作用により形成される“活動銀河核(AGN)ジェット残骸(繭とシェルで構成)”の力学進化とその残骸からの熱的・非熱的放射を整合的に解き、AGNジェット残骸からの多波長スペクトルの時間進化を計算することである。これらの理論計算と空間スケールの異なるジェット残骸を比較することで、無衝突衝撃波の物理を明かにすることを目指した。最終年度は以下の2点を明らかにした。(i) 昨年度は、ジェット活動の停止した天体で予想される多波長スペクトルを計算した。今年度はこのモデルを近傍の非常に若い電波銀河3C 84に適応し観測との詳細な比較を行った。これにより、AGNシェルでの粒子加速や磁場増幅の素過程について議論を行った。この成果の一部は国際研究会にて口頭発表し、成果全体は現在論文にまとめており、近日中に投稿予定である。また、シェルからの放射を考える際にジェット周辺の環境を調べることは重要であり、電波ローブの力学的性質からブラックホール周辺10パーセクに存在する高温ガスの温度・密度に調べた。この研究成果は学術論文に掲載されている。(ii) 昨年度に引き続き、AGNジェット残骸の力学モデルから制限される繭の全圧と繭の状態方程式から、繭のプラズマ組成に制限する方法を考案し、ジェットパワーの既に分かっている電波銀河4天体に適応した。その結果、全ての4天体に対して、電子・陽電子ペアプラズマの混在が必要不可欠であることが分かった。これはブラックホール近傍での電子・陽電子ペアプラズマ生成・消滅の問題とも密接に関係する。この研究成果は学術論文への採録が決まった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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