研究課題/領域番号 |
25800101
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
天野 孝伸 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00514853)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマ / 相対論 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
相対論的プラズマダイナミクスを記述する数値シミュレーションモデルとして,現在は相対論的磁気流体方程式(RMHD方程式)が標準的に用いられているが,本研究ではその拡張として電子・イオン(もしくは電子・陽電子)を別個の流体として扱う相対論的2流体モデルの数値シミュレーションコードの開発を行っている.
今年度はまず有限電気抵抗の扱いについて考察を行った.相対論的2流体モデルを用いた先行研究では,有限の電気抵抗を流体間の摩擦として表す手法が用いられてきたが,これは長波長極限においても必ずしも標準的な抵抗性RMHDと一致するものでは無かった.また,これは電子・陽電子系を仮定したモデルとなっており,電子・イオン系への適用は出来ていなかった.そこで本研究では長波長極限で抵抗性RMHDに一致し,電子・イオン系にも適用可能な新たな抵抗モデルを考案した.さらに,このモデルを開発してきたコードに実装し,標準的なテスト問題において抵抗性RMHDの結果と矛盾しない結果が得られることを示した.この新しい抵抗モデルと数値スキームを議論した論文は国際誌に投稿中である.
また米国ノートルダム大学との共同研究によって,有限体積法を用いた数値スキームの更なる高精度化にも取り組んだ.この手法では各セルで体積平均として定義された量から,セル内の物理量分布を表す補間関数を構築する必要があるが,電磁場の補間はMaxwell方程式のdiv(B)やdiv(E)に関する拘束条件を満たさなければならない.本研究ではこの拘束条件を満たしつつ高次精度(3次および4次精度)で補間関数を構築する方法を開発した.本手法はノートルダム大学のグループによって実装され,そのテスト計算結果は我々の開発した,有限差分法を用いたコードによる計算結果と良く一致することが確かめられた.この結果は共著論文として国際誌に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Maxwell方程式の拘束条件を満たす安定な数値シミュレーションスコードの構築という当初目的についてはほぼ達成したものと考えている.また高次精度化についても共同研究を通じて大きな進展があった.
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今後の研究の推進方策 |
相対論的2流体方程式系の弱点として,プラズマ周波数程度の周波数を持つ高周波モードの存在が挙げられる.このため現実的なパラメータのもとでは数値シミュレーションの時間ステップに非常に厳しい制限がついてしまい効率が良くない.この問題については陰的解法を用いることで解決出来る可能性があり,今後はこの方針で開発を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究成果報告として次年度の国際会議での発表が予定されているため.
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次年度使用額の使用計画 |
国際会議への参加旅費とする.
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