研究課題/領域番号 |
25800104
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上塚 貴史 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (30613509)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中間赤外線天文学 / モスアイ / グリズム |
研究概要 |
本研究の目的は、高効率の長波長中間赤外線分光素子の実現をめざし、「モスアイ反射防止構造」を利用したグリズムを開発することである。長波長中間赤外線の分光素子には入手性・加工性・製作性の良いシリコングリズムが有効であるが、表面反射により半分程度の光を損失してしまう。本研究ではこの損失を防ぎ高効率化する手段として、広い波長帯で高い反射防止効果が実現でき、かつ中間赤外線の光学系に求められる極低温環境への高い耐久性が期待される「モスアイ反射防止構造」に注目し、これをグリズム表面に適用した「シリコンモスアイグリズム」を開発し、次世代の中間赤外線分光観測の感度向上に役立つ技術として確立することを目指す。 本年度の目標は、シリコンモスアイグリズムの実現に向けて解決すべき加工プロセスの課題を洗い出し、試作を通してそれらを解決する事であった。シリコンモスアイグリズムの加工は、「グリズム形状の形成加工」と「モスアイ反射防止構造の形成加工」の二つの工程からなる。過去の試作では、グリズム加工の結果、グリズムの階段面に魚鱗状の凹凸・裏面に数ミクロンの傷が発生していた。これらは後のモスアイ加工において悪影響を及ぼす可能性があるため、解決すべき課題として捉え、研磨・エッチングといった加工の手順と手法の見直しを行い、改めてグリズムの試作を行った。その結果、魚鱗状の凹凸の減少、裏面の傷の抑制に成功し、傷の最大深さはサブミクロン以下のレベルとなった。これらはモスアイ加工に影響を及ぼさないレベルと考えられ、グリズム加工における課題をクリアできたものと判断する。モスアイ加工において開発課題であった「サンプル両面へのモスアイ加工」「階段面へのモスアイ加工」については過去の試作によってクリアできたため、試作を通して解決すべき課題は全て解決し、シリコンモスアイグリズムの完成に向けての条件を整える事ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主な課題はモスアイグリズムの実現に向けての加工課題の洗い出しと、プロセスの見直しによる課題の解決であった。グリズム形状の加工に関して階段面の魚鱗状の凹凸・裏面の深い傷の発生という問題があったが、これらについて大きく改善したグリズムサンプルを製作することに成功した。もう一つの主要な工程であるモスアイ構造の形成加工については、電子線リソグラフの際のレジストの不均一性に起因するモスアイパターンの形成不良という問題があったが、複雑な形状へのレジスト塗布に適したスプレーコートを採用することで大幅に改善できる事が過去の試作において判明した。以上の点から、モスアイグリズムの加工課題は解決し、完成に向けた条件を整えることができたため、順調に進展していると考えている。 本年度予定していたモスアイグリズムの評価システムの整備はやや遅れており、現在進行中であるが、当初の予定を大きく乱すものではない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の開発により、シリコンモスアイグリズムの完成への土壌は整った。来年度は本年度得られたグリズムサンプルの両面にモスアイ構造を形成する加工を施し、シリコンモスアイグリズムを完成させる予定である。完成は年度中ごろを予定している。それまでにモスアイグリズムの評価システムの構築を行い、完成後速やかに評価試験を実施し、従来のグリズムと比較しての効率の向上効果を実証したい。また、これまでのシリコンモスアイグリズムの開発成果については、国際学会 SPIE にて発表を行いたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度のモスアイ加工の費用が高額となる可能性があるため、可能な範囲で余剰金を繰り越したいと考えて運用した結果、次年度使用額が生じた。特に問題が生じたためではなく、計画に支障は出ていない。 次年度のモスアイ加工の費用として、もしくは完成を予定しているシリコンモスアイグリズムの評価試験のセットアップを製作する費用として利用したい。
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