研究課題
本研究は、高効率の長波長中間赤外線分光素子の実現をめざし、モスアイ反射防止加工を施したシリコングリズムの実現を目指すものである。シリコンは長波長中間赤外線においても透明な数少ない光学材料であるが、表面反射損失が大きく透過型光学素子に利用するには反射防止加工が重要である。通常は反射防止コーティングを施すが、天文用中間赤外線観測装置では極低温への冷却耐性が求められ、厚みが大きくなる長波長中間赤外線用の反射防止コーティングは熱収縮に弱くこの要求を満たさない。モスアイ反射防止構造は微細な凹凸構造であり、シリコン表面を反応性イオンエッチングで掘り込むことで形成できる。形成される構造は光学素子と同一素材である事から熱変形に強く、冷却耐性の要求を満たす。また、モスアイ構造は非常に広い帯域で高い反射防止特性を示し、光学特性も優れている。これらの点に着目し、長波長中間赤外線天文観測用の高効率かつ冷却耐性に優れた分光素子の実現を本研究では目指す。モスアイグリズムの実現には、十分な面精度を持つシリコングリズムの形成と、くさび形状の両面、およびグリズムの凹凸面(ブレーズ面)へのモスアイ形成の技術の確立が必要であった。まず最初に十分な面精度を持つグリズムの形成に取り組んだ。グリズムの形成には研磨加工とウェットエッチングを利用するが、研磨痕がエッチングにより、モスアイ形成に支障を与える程まで深くなる問題があったが、加工手法の見直しにより解決することができた。次にグリズム両面へのモスアイ形成に取り組んだ。ブレーズパターンへのモスアイ形成はこれまでの開発研究により確立し、この技術を応用することで、均一性も高くほぼ設計通りの形状を持ったモスアイパターンをグリズム両面に形成することができた。以上の通り、モスアイグリズムの製作に必要となる一連の技術が確立し、両面モスアイグリズムを完成させることができた。
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Proceedings of the SPIE
巻: 9151 ページ: 91515G 8 pp.
10.1117/12.2055756