研究課題/領域番号 |
25800106
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河原 創 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90649758)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 系外惑星キャラクタリゼーション / 系外惑星大気 / コロナグラフ / 高コントラスト装置 / 大気散逸 / 恒星惑星相互作用 |
研究概要 |
本年度は、恒星近傍を回る(1)恒星惑星相互作用(SPI)を探るキャラクタリゼーション法と(2)惑星視線速度検出のための新しい装置提案の二つの課題を中心に研究を行った。(1)について、Kepler衛星で見つかったKIC12557548b (以下KIC1255b)について、Kepler Light Curveデータを解析した。KIC1255bは、木星サイズから地球以下のサイズまで、トランジットごとにdepthが変動する奇妙な系外惑星である。これは地球型惑星から大量のガスとダストが断続的に放出されているために見える現象であるという仮説が有力である。今回、なぜ惑星から大量のダストが放出されるのか探るため、トランジット深さと恒星のライトカーブの相関解析をおこなった。その結果、ピリオドグラムから得られた深さ変動の周期と恒星回転の周期が一致し、かつ、トランジットが深いphaseでは恒星の高度が小さい、すなわち黒点側で深さが30%程度深い事を発見した。このことは大気散逸が恒星活動と関連している事を示唆する。またSPIを探る新しい方法論を提示できたとも言える。これら結果は、査読論文としてAstrophysical Journal Letterに掲載された。また、(2)については、これまで惑星視線速度法は望遠鏡のcollecting area limitであるという問題点があった。今回、高コントラスト装置を高分散装置に組み合わせる事で惑星視線速度測定のゲインが数倍から、数十倍あがることを理論・シミュレーションでしめした。次世代大型望遠鏡での、系外惑星大気の分子の直接検出において、もしこれらの高コントラスト装置が働けば、劇的なS/Nの向上が期待できる事を意味している。これら結果についてはAstrophysical Journal Supplementに投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
惑星視線速度法については、今後の発展にとって根本的な問題のひとつであるcollecting area limitを超える装置提案をできた事が大きい。この提案装置Spectroscopic Coronagraphは、系外惑星大気を高分散分光で直接測定する方法論のゲインを改善するものであり、それゆえ、当初の目的と合致した提案装置である。実現への見通しはまだまだであるが、系外惑星キャラクタリゼーションの適用範囲を広げうる成果だと考えている。 蒸発惑星KIC1255bについては、今後TESS衛星による近傍惑星探査で同様な惑星が見つかった際に、本研究で提案した方法を用いる事ができると予想される。これまでSPIの観測は、限られていたが、光度曲線のみからSPIを探るできる本方法は今後も有用であろう。以上の理由から、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
惑星視線速度については、実際に観測提案を行っているところなので、これが採択されれば、自転効果の検出を試みたいと考えている。同時に高コントラスト装置チームと、今回提案したSpectroscopic Coronagraph の実現可能性を検討したいと考えている。また、本丸であるハビタブル惑星でのキャラクタリゼーションに惑星視線速度がどれだけ応用可能であるのか検討したい。 今後は、水惑星の検出可能性と酸素Flase Positiveの検討を行う。これは太陽系外惑星における生命探査に向けた重要な検討である。もしFalse Positiveが深刻な問題である場合、酸素バイオマーカーに加えてどのようなキャラクタリゼーションを行えばよいのか検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文の受理が遅れているため 現在投稿中の論文掲載料に用いる
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