本研究は、電波天文学の望遠鏡で一般的でなかったクワッドリッジアンテナを1次放射器として用いて、広帯域受信可能なシステムを開発することである。そのために、まずクワッドリッジアンテナの電磁界解析を行い、20-50GHz帯の試作アンテナの開発を行った。また、並行して既製のクワッドリッジアンテナ(2-14GHz帯)の特性の評価を進めた。このクワッドリッジアンテナは広いアンテナ指向パターンを持っているため、単体だけでのビームパターン測定などの評価では不十分である。そこで、受信機デュワーを模した構造体を製作し、その中に被評価物を設置してのアンテナパターンの測定などを行った。さらに、本学に口径1.8mのパラボラ鏡をもつ電波望遠鏡を移設した。この望遠鏡の主鏡焦点に、この既製のクワッドリッジアンテナを搭載して、衛星放送信号(BSやCS放送)の受信に成功した。また、この衛星信号を用いてビームパターンの測定などを進めた。測定評価系の確立を確認したのちに、開発した20-50GHz帯クワッドリッジアンテナをこの1.8m鏡に搭載して、20GHz帯に発信信号をもつ静止人工衛星の信号受信を進めた。これにより、クワッドリッジアンテナを用いた電波望遠鏡の性能評価を行った。これらの結果から、クワッドリッジを電波望遠鏡に用いるときに必要な様々な経験や知見を得て、実用化に目処を立てた。今後は、実際の天体からの信号を受信するための、高性能受信機の整備等を進めて、実用化を行う。
|