研究課題
銀河団の観測的研究について、私は銀河団Abell 1246 の観測提案をX線天文衛星「すざく」に行い、中心領域とオフセット領域について実際に観測した。銀河団中心から銀河団の勢力範囲(ビリアル半径)を越える領域までのX線スペクトルを詳細に解析した結果、銀河団の温度は中心で約7 keV であり、外側に行くほど温度が低くなり、ビリアル半径付近では2.5 keVまで下がっていることを確認した。X線で観測したガスの温度と密度から静水圧平衡を仮定して銀河団質量を求めたが、これは弱い重力レンズ効果を用いて銀河団の質量を求めているスケーリング則に比べて20%程度小さいことが判明した。これは、銀河団の外側領域では静水圧平衡が成り立っていないことを示唆する結果である。また、銀河団形成の際の熱エネルギー収支の指標となるX線天文学的「エントロピー」の半径分布を調べた結果、宇宙論的数値シミュレーションを用いた予測と乖離しているという結果が得られた。これも銀河団の外側では静水圧平衡が成り立っていないという結果を支持するものである。私はこの結果を日本天文学会誌に投稿し、採択されている。実験的研究としては、誘電体カロリメータ素子及び読み出し回路の開発を継続して行った。昨年度に初めて「カロリメータシステム」としての性能実証に初めて成功したが、今年度は極低温アンプを用いた回路の製作を行った。また、素子の温度を変化させた時の熱計算から、誘電体素子からの信号として妥当であるという確証を得た。2015年度打ち上げ予定のX線天文衛星「ASTRO-H」搭載SXS検出器の飛翔体冷凍機の性能実証試験をJAXA及び住友重機械工業で行った。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 1件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 66 ページ: 85-1 -- 85-15
10.1093/pasj/psu061
巻: 66 ページ: 99-1 -- 99-14
10.1093/pasj/psu075