本研究の目標は、宇宙望遠鏡もしくは補償光学を有した地上望遠鏡の赤外線天体観測装置に組み込むことによって、望遠鏡口径で決まる回折限界を超える角度分解能が得られるようになる、フォトニック結晶スーパーレンズを実現することである。本年度は、フォトニック結晶スーパーレンズの設計、および試作を実施した。現在、下記の成果を論文としてまとめあげるべく、執筆中である。
1.フォトニック結晶スーパーレンズの電磁場解析による設計 前年度に引き続き、波長10ミクロンの赤外線を透過する光学材料のフォトニック結晶構造について、時間領域差分法(FDTD法)、および厳密結合波解析法(RCWA法)による設計を行った。前年度に検討した光学材料カルコゲナイド・ガラスに加え、2光子重合原理にもとづく3次元レーザーリソグラフィーによる加工において、カルコゲナイド・ガラスよりも高い加工性をもつフォトレジストSU-8にも新たに着目し、フォトニック結晶スーパーレンズの解の探索を実施した。その結果、Fナンバー10の回折限界ビームを入射させたときに、入射ビームに対する出射ビームの半値全幅が75%程度の大きさとなる、SU-8製2次元構造フォトニック結晶スーパーレンズが存在することを、FDTD法の解析によって確認した。更なる最適解の探索は、本研究の継続課題(課題番号:15K17615)において実施予定である。
2.フォトニック結晶スーパーレンズの試作 電磁場解析によって設計したフォトニック結晶スーパーレンズを試作し、その加工精度を確認中である。その後、前年度に設計・構築した望遠鏡シミュレータを用いた光学実験による検証を実施予定である。
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