研究課題
若手研究(B)
星形成は銀河の中では極めて局所的な現象ではあるが、集団的に進行する事で銀河全体の形態や、色を変化させる事ができるという点で宇宙の進化を考える上では避けて通る事ができない。研究代表者の目的は、星形成及びその周辺環境である星間空間の様々な物理変数の間に成立する平衡状態を記述する方程式系(多変数星形成則)を構築する事にある。平成25年度は、これまでにさんかく座銀河M33の分子雲に対して構築する事に成功した5変数間に成立する指数関数2つに関する議論を精密化するために国内各大学で講演を行った。また、追加の重要な変数の探索および現在得られている変数の精密化の為に共同研究者とともにALMA電波望遠鏡に観測提案を行い、採択された。また、本研究は星形成一般に対して成立する方程式系を構築する事が目的であるためにさんかく座銀河M33以外での議論が欠かせない。二天体目を南半球の巨大銀河NGC300に決定し、ガス密度を導出するための電波観測をオーストラリアMOPRA望遠鏡にて200時間以上の観測時間を確保し、完了した。また、星形成率の精密な導出のために必要な水素輝線(Paα)の観測を東京大学miniTAO望遠鏡にて行う事に成功した。両観測データについて、国内の複数の大学と研究チームを組んでともに解析を進めている。多変数星形成則の一般化に向けて、3天体目以降のデータ解析も進めている。研究代表者がハッブル宇宙望遠鏡で取得した、多数の銀河に対して星形成率の精密な導出に有利な水素輝線(Paα)の大規模サーベイデータの出版も完了した。
3: やや遅れている
本研究の根本的な部分をなす多変数解析をするにあたって、星形成分子雲のサンプル増大は重要である。さんかく座銀河M33につづく2天体目の観測データに関して、ガス密度を導出するための電波データは順調に取得できたが、解析がスケジュールに比べて遅れている。原因としてはオーストラリアの望遠鏡で取得した電波スペクトルに装置起因の定常波が存在し、それを取り除くためのソフトウェアが現段階では整備されていない点が挙げられる。すでにさんかく座銀河M33で得られている初期結果の出版についても当初予定よりは少々遅れているが、これは議論の精密化を行ってインパクトの大きな論文にするための判断であり、研究計画全体への支障はない。
平成25年度の研究実施でスケジュールが遅れた電波データの解析に関しては共同研究者が独自の方法を考案しており、NGC300銀河への適用を早期に行う予定である。公開されているデータアーカイブ上の本銀河のデータもすでに確認しており、2天体目での多変数星形成則構築へ向けて現時点で大きな問題はない。今後は初期成果であるM33銀河について出版し、国内外での普及に努めるとともに、多変数星形成則の一般化に向けて3天体目以降の解析をALMA電波望遠鏡で公開されはじめたデータアーカイブを利用して始める予定である。
南米チリへの観測出張費用として算出したが、実際の観測をチリ在勤の共同研究者が代行する事になった。そのため、日本からチリ共和国までの旅費が不必要となった事が主な理由。また、初期成果に関する論文は、議論の精密化を行ったために当該年度には出版しなかった。そのために論文出版費がなかった事も寄与した。使用しなかった観測出張旅費は今年度は海外での研究発表およびデータ解析/観測実行の謝金に充てる事とする。さんかく座銀河M33の初期成果についての論文は今年度出版するため、使用する予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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