研究課題
若手研究(B)
宇宙には円盤銀河が数多く存在するが、その形成メカニズムは未解明の重要な問題である。大規模構造形成の標準モデルでは、銀河衝突や合体の繰り返しにより円盤は成長していくとされるが、このプロセスは観測的には証明されていない。本課題では、非常に高い感度と分解能を備えたALMA望遠鏡の特徴を生かし、銀河衝突末期段階での分子ガスの特性を調べ、銀河衝突による円盤の形成過程に迫る。近傍ではあるがサンプルに偏りのない方法で衝突末期の銀河を世界ではじめて大規模にサーベイするという点に特徴があり、天の川銀河のような円盤銀河の形成の本質に迫るという点で極めて大きな意義がある。H25年度は、ALMA望遠鏡を用いて20天体を観測した。その他、SMAとCARMA望遠鏡でデータを取得し、合計40天体の世界最大の衝突末期天体のサンプルを構築した。 得られた電波画像に対して円盤モデルフィットを行い、円盤の存在を明らかにするとともに、円盤の回転速度を求めた。その結果、多く(約80%)の天体が大小様々な回転円盤を持つことが分かった。大きいものでは天の川銀河に匹敵するサイズの円盤を形成していることが明らかになった。また、分子ガス輝線積分強度から分子ガス質量を導出し、星質量との比を求め、円盤形成とガスー星質量比の相関を調べた。その結果、本研究で観測した衝突末期の天体は、早期型銀河や晩期型銀河とは違い、円盤の大きさとガスー星質量比に強い相関が見られないことが新たに分かった。結果については、シミュレーションとの比較などから、現在考察をすすめている。国際研究会2件、国内研究会3件において、研究成果を口頭発表した。また、現在3編の論文を執筆しており、第1編はまもなく投稿予定である。
2: おおむね順調に進展している
H25年度の計画の概要は、以下の通りである。(1)ALMA望遠鏡を用いた分子輝線観測、およびデータ解析、(2) 得られた電波画像の解析、(3) 他の銀河種族や、シミュレーションとの比較。H25年度では、(1)と(2)を既に完了しており、(3)も50%完了している。現在(3)の残り半分(シミュレーションとの比較)を進めており、計画はおおむね順調に進展していると判断できる。
H26年度は、理論研究者との共同研究を推進し、シミュレーションとの比較を主に行っていく。また、観測結果を論文としてまとめていくことを平行して進めていく。第1編はまもなく投稿予定である。国内・国外研究会において、研究成果を発表していく。
出張に係る旅費が、想定していた額よりも安価であったため。H26年度は、理論研究者との共同研究を推進し、観測結果を論文としてまとめていく予定である。次年度使用額については、そのための研究打ち合わせに係る経費や、研究会参加のための経費に使用する予定である。
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ASP Conference Series
巻: 476 ページ: 61, 64