研究課題/領域番号 |
25800117
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
美濃和 陽典 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (60450194)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 銀河進化 / 銀河形成 / 補償光学 / 光赤外線天文学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、銀河進化の激動期である赤方偏移1.5-2.5にある星形成銀河を、すばる望遠鏡に搭載された補償光学(AO188)を用いて、ハッブル宇宙望遠鏡を凌ぐ世界最高解像度で観測し、その内部の星形成活動、恒星種族分布の精密なマッピングにより、銀河進化過程の解明においての未解決問題の一つである質量集積過程を明らかにすることである。
平成26年度は、平成25年度に引き続き、すばる望遠鏡の共同利用観測に、近赤外線撮像分光装置(IRCS)とAO188を用いた狭帯域撮像観測による赤方偏移2程度の星形成銀河の観測提案を行った。我々の観測提案は無事採択され、合計5晩の観測を行った。悪天候のため観測時間の大部分を失ってしまったが、本研究の目的であった星形成銀河からのHα輝線の狭帯域撮像データを初めて得ることができた。得られたデータの空間解像度は、ハッブル宇宙望遠鏡を超える0.15秒角程度であり、銀河内部の星形成クランプを分解することができ、本研究の目的が達成できることを確認することができた。現在、得られたデータを詳細に解析し、銀河内部の構成種族の分布から、銀河内部においていつどこで星形成活動が行われたか、またそれらの性質が銀河の周辺環境によって差があるかどうかについて調べている。
平成26年度得られた観測データは、まだ当初の目的の一部でしかないため、平成26年度末に再度すばる望遠鏡共同利用に観測提案を提出した。観測提案は、現在審査を受けているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度行った既存狭帯域フィルターの評価結果に基づき、平成26年度は予定通りサイエンス観測を行った。提案していた観測の大半を悪天候のため達成できなかったものの、本研究の初期成果となる質の良いデータを得ることができた。その結果、我々の研究手法の妥当性を実証することができ、さらなる観測時間の獲得に役立てることができた。 平成26年度は新狭帯域フィルターの製作を予定していたが、既存狭帯域フィルターでの観測が想定通りには進んでおらず、また実際にサイエンス観測を進めていく中で、新フィルターの仕様を変更することになり、平成26年度中の製作を見送った。これまで得られたサイエンスデータの解析を通して、新フィルターの仕様を確定したため、平成27年度の前半に新フィルターの製作を行う予定である。 以上のことから、本研究は概ね予定どおり進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、本研究の手法の妥当性を実証することができた。平成27年度以降は、これまで得られたデータを解析し、初期成果を論文にまとめるとともに、新狭帯域フィルターの製作と、それを用いた新たな観測提案を行い、大規模な星形成銀河の高解像度撮像データの取得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の必要予算の大部分を占めるのは、狭帯域フィルターの購入に必要な予算である。1. 本研究の当初の予定では、初年度にあたる平成25年度にフィルターを購入する予定であったが、既存の同種フィルターの性能評価試験に時間を費やしたため、初年度の購入を見送った。2年目となる平成26年度は、評価試験をもとに、フィルターを購入する予定であったが、既存フィルターを用いたサイエンス観測の結果を待って、フィルターの仕様を確定することにした。2. 平成26年度後半に行ったサイエンス観測の結果、フィルターの仕様を変更した方がより良い結果が得られることが分かり、本年度の購入は見送り、平成27年度の前半に購入することにしたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
新フィルターの仕様は確定しているため、平成27年度前半にフィルターの購入を行う予定である。それにより、次年度使用額の大半を使用する予定である。
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