研究実績の概要 |
Ia型の若い超新星残骸(SNR), Kepler’s SNR, Tycho’s SNR, SNR 0509-67.5のX線データ解析を推進した。2 keV 以下の低エネルギー側ではXMM-Newton による分散分光データを、それ以上の高エネルギー側では「すざく」XISデータを利用することで、最高品質のX線データを抽出・解析した。その結果、中間質量元素(Si, S, Ar, Ca)に対する鉄族元素(Fe, Ni)の質量比が、Kepler’s SNR, SNR 0509-67.5 では同程度であり、Tycho’s SNRより数倍大きいことを発見、両グループで56Niの生成量が大きく異なるという示唆を得た。実際、SNR 0509-67.5とTycho’s SNRについては爆発時の可視光エコーが検出されており、その分光解析から、56Ni生成量がそれぞれ多量、普通であったことが確定しているため、本研究の視点(中間質量元素と鉄族元素の質量比)は、Ia SNRの爆発のサブタイプを特定する新しい手法になりそうである。これまで、Ia型と重力崩壊型の判別はしばしば行われてきたが、Ia SNRのサブタイプにまで踏み込んだ研究は皆無であり、新規性が高い。 この他、白鳥座ループ超新星残骸の南西端における明るいノット構造や、RCW89 についても、XMM-Newtonの分散分光データの解析を進めた。前者については、ヘリウム様酸素のKα禁制線が共鳴線の2倍ほど強いことを発見し、その解釈を検討している。後者については、輝線のドップラーシフトからSNRの立体構造を探った。いずれも論文を準備すると共に、国内外の研究会等で進捗を発表している。
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