研究課題
シンクロトロンX線放射が卓越する超新星残骸RX J1713.7-3946から、初めて熱的X線放射を検出した。そのスペクトル解析により、元素組成比をNe/Fe > 20, Mg/Fe > 40 倍太陽組成比と導き、熱放射の起源が親星の破片と結論した。測定した組成比から、親星の質量を太陽質量の20倍以下と推定することに成功した。X線精密分光から派生し、可視光や極端紫外線帯域での高分散分光観測にも手を広げた。可視光観測では、「すばる」HDSを用い、白鳥座ループ超新星残骸を縁取る淡いバルマーフィラメントに対して、Hα long slit分光観測を実施した。スリット長軸を衝撃波面に垂直に設置することで、衝撃波面からの距離の関数として様々な物理量の変化を調べた。その結果、衝撃波の前後でHα輝線の存在を確認した。興味深いことに、H-alpha輝線プロファイルは、衝撃波前面では細く(29 km/s)、衝撃波面で急激に(「すばる」の空間分解能 ~4e15 cm @540pc 以下の狭い領域内で)、33 km/s まで太くなることを発見した。我々は、この幅増大が、宇宙線プリカーサー内のアルベン波減衰に伴う加熱によって引き起こされている可能性が高いことを突き止めた。本成果を突破口に、観測宇宙線加速メカニズムに迫れる感触を得たので、さらに踏み込んで議論するため、同一天体の他の領域および他の天体の観測も提案した。他方、極端紫外線衛星「ひさき」を用い、ケプラー超新星残骸の分散分光観測も実施した。本研究期間全体を通し、白鳥座ループ、パピスA、ケプラー、0509-67.5超新星残骸に対して、XMM-Newton RGSによるX線精密分光に成功した。その緻密なデータ解析により、多岐にわたる成果を上げ、査読付論文5編、国際会議での招待講演5件、国内外の学会や研究会における口頭・ポスター発表6件、国内のセミナー4件などで公表した。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
The Astrophysical Journal Letters
巻: 819 ページ: 1-6
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The Astrophysical Journal
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