研究課題/領域番号 |
25800121
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
堀内 渉 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00612186)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 原子核構造 / 原子核反応 / 核力 |
研究実績の概要 |
第一原理計算による未知の原子核の予言、宇宙核物理で必要な反応率の信頼のおける評価を行いたい。多くの核子を含んだ系を非経験的に記述する理論の確立、応用するのが本研究計画の2本柱である。今まで数体系に限られていた核力からの精密計算の適用範囲を拡張し、未知の不安定核や実験困難な宇宙核物理領域に必要な物理量に対して信頼のおける評価を行う。
本年度は多体計算を効率的に行うため相互作用の変換に関する研究を進め、実際の3体計算への適用を行うと同時に、精密波動関数の応用研究を行った。特に応用面に関しては関連の理論計算について3編の原著論文を発表した。また、4月にオーストラリア・アドレード市近郊にて行われたアジアパシフィック少数体物理国際会議及び、5月に横浜にて行われた原子核クラスターに関する国際会議にて招待講演を行った。
最も大きな業績は、模型を仮定しない6体計算によるヘリウム6原子核の励起構造に関する研究である。ヘリウム6原子核はヘリウム4原子核を芯として周りに2つの中性子が大きく拡がって分布するハロー構造を持つと考えられていて、ソフトモードと呼ばれる芯核と2価中性子間の振動の存在が予想されている。通常ヘリウム4の芯を仮定した3体計算での記述が行われているが、本研究では模型を仮定しない6体計算の立場から電気双極子励起機構を研究し、低励起状態は価中性子の励起が主のソフトモードであることを明らかにした。研究成果は原著論文として査読付き英文雑誌に出版され、京都で行われた国際分子型研究会における招待講演として成された。また、精密波動関数を用いたニュートリノ-原子核反応断面積について研究は進行し、その中間成果は3月に早稲田大学にて行われた日本物理学会年次大会の一般講演として成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相互作用の変換に関してはまだ具体的成果として表れていないが、昨年度では相似変換に関する性質やどのように解を求めるべきかの方策を実際の3体計算によって確かめることができた。研究業績概要で述べたように、もう一つの柱である厳密波動関数の応用面で、3編の論文を発表するなど予想以上の成果が得られている。これらのことを考慮して、計画は概ね順調に進行しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は相互作用の変換に関して少数体系についてのテスト計算などを進め、論文執筆まで行うことを目標としている。量子力学的3-4体系に対して応用し、この方法の有効性を調べ、更に重い核への適用について検討していく。本年度同様、応用研究についても並行して進めていくつもりで、特にニュートリノ原子核反応について論文としてまとめることを目標としている。研究成果発表の場として、国内学会2回、5月にアメリカ・シカゴにて行われる少数体物理国際会議、7月に香港にて行われる陽子中性子相関についての国際会合への参加を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額のため次年度へ繰越とした。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費として使用。
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