当該年度は,新データ取得回路(MoGURA)と既存回路を複合した解析方法の確立,次世代型発光バルーン製作に向けたフィルム特性の試験,高量子効率光電子増倍管の基礎特性の測定を行った。 まず,前年度に確立したMoGURAデータによる解析方法を発展させて更なる感度向上を図った。具体的には,現在MoGURAでは全体の約2/3のPMTデータしか取得できていないため,残る1/3は既存回路のデータを用いて最尤法関数を組むことで精度向上を目指した。その結果,位置分解について約6%ほどの向上が見込まれることを明らかにした。 次に,前年度に十分な発光量を確認したPENフィルムに対して,バルーン製作にむけた特性を測定・評価した。まず,溶着方法の検討を行い,インパルス溶着方法によって要求(10N/cm)以上の強度(27N/cm)を持っていることを実証した。次に,シンチレーターの主成分であるPCに対する耐性を評価し,1年以上の期間透過率などの特性に変化がない事を明らかにした。その他Xeに対するシールド率の評価などを行い,バルーン製作にむけた基礎特性を完了することができた。 また,カムランド検出器アップグレードにむけ近年浜松ホトニクスで開発された高量子効率光電子増倍管(PMT)の基礎特性の測定を行った。特に,新PMTは計算機パワーを駆使して高精度電磁場計算を行って設計がなされているため,20インチ有効面全体において優れた時間応答を持っていることが予想された(現行カムランドPMTは時間応答のために有効面を17インチに制限している)。そこで,レーザー光源を用いた時間分解能測定システムを構築し,20インチ全面にわたって現行PMTと同程度の時間分解能(FWHM=4nsec)を持っていることを実証した。
|