原子核の励起による構造変化へのクラスタ構造等の多体相関の効果の寄与を、理論及び数値シミュレーションにより研究した。今年度は特にその手法に進展があった。また、多核子移行反応や単極及び双極遷移とクラスタ構造との関係の研究も行った。 多様に変形した構造を詳細に調べるためには、角運動量射影という計算を数値的に行う。しかし、それを高精度に計算する一般的な手法は知られていなかった。高精度な角運動量射影のためには、回転に対し対称性のいい軸を選ぶことが重要である。角運動量の分散の小さい方向を軸に取ることによって軸対称性のいい軸を選ぶ手法を開発した。それを偶々核だけでなく奇核や奇々核について、球形や変形構造やクラスタ構造等の様々な状態に対して適用し、開発した手法が一般的で有効であることを示した。 多核子移行反応については、酸素16にリチウム6を衝突させ、リチウム6中にあったヘリウム4(陽子と中性子が2つずつ)を酸素16に移行させてネオン20を作り出す反応(アルファ移行反応)について研究した。ネオン20は核表面付近におけるヘリウム4が存在するが、核表面のヘリウム4の存在確率とアルファ移行反応確率が密接な関係にあることを示した。 基底及び励起状態におけるクラスタ構造成分は単極遷移強度を増大させることが分かってきたが、クラスタ構造成分は双極遷移強度をも増大させることを解析的に示した。さらにアルファクラスタ構造が発達するネオン20とチタン44の構造計算を行い、アルファクラスタが発達した励起状態への双極遷移強度が大きいことを示した。また、ケイ素28について、クラスタ構造が発達した状態への単極及び双極遷移強度が大きいことを示した。
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