本研究課題は、GPGPUを用いたパルサーからの重力波探索コードの開発を目指しておこなうものであった。KAGRAをはじめとする重力波検出器によって人類初の重力波直接検出が10年以内に迫っているが、パルサーからの重力波検出は計算機コストによって制限されている側面があり、本課題はこの問題を解決するためにおこなっていた。結果として探索コードを開発したものの、費用対効果の面では格段の計算コスト削減は望めず、GPGPU利用には慎重にならざるを得ないという結論を得た。一方、最も最適な手法ではないものの、次善の策として考えられている手法ではGPGPUによって既存コードが100倍高速になることが、初期研究段階ながらKAGRAの共同研究者によって示されており、異なるターゲットについて別手法による高速化には可能性が残されていることがわかった。なお、本研究課題に関連して4本の論文を出版した。まずKAGRAデータ解析をテストする上で現状利用できるTOBAデータの解析への準備として、レーザー干渉計型重力波検出器に対するTOBA検出器の角度分解能に関する優位性を示した論文を出版した。一般にレーザー干渉計型重力波検出器は1台では波源の方向を全く決定できない。しかしTOBAでは3つの出力を利用することによって重力波の偏極を決定することができ、このことが1台での方向決定を可能にしていることがわかったのである。また、およそ重力波では検出不可能であると考えられていたダークマターの重力波の影響を定量的に示し、重力波のよるダークマター検出の道を示した。最後の1本は年度が変わってから出版されたものの研究自体は2014年度におこなったもので、今まで連星でのみ可能であった中性子星の質量測定を、重力波を使えば単独中性子星であっても可能とするものである。
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