研究実績の概要 |
本研究では、現在知られている最も中性子過剰核な二重魔法数核ニッケル-78(Ni-78)における中性子一粒子軌道エネルギーの決定のため、近傍の亜鉛(Zn)同位体の核分光測定を行った。 本年度は、理化学研究所の不安定核生成施設RIビームファクトリー(RIBF)において2013年度までに実施したベータガンマ核分光実験の解析をすすめた。解析の結果、Zn-78,79,80,81核それぞれの脱励起ガンマ線を同定し、ガンマガンマ同時計測解析によって励起準位の崩壊様式の決定に成功した。Zn-81核で測定したガンマ遷移エネルギーは、安定核でよく知られていた中性子56の準魔法数的な性質が中性子過剰核においては消滅していることが示唆していた。一方で、Zn-79核で得られた励起準位構造は、研究開始当初想定していたものよりも複雑であり、ベータガンマ核分光の結果のみではスピン-パリティの同定が困難であることが明らかとなった。 そこで、中性子一粒子軌道に関連する励起準位のみを選択的に励起することができる一中性子ノックアウト反応により、励起準位の性質を同定することを目的とした新たな実験を計画し実施した。実験は、SEASTAR国際共同研究プロジェクトの一環として2014年5月に行った。このSEASTAR実験によって得られた結果と、ベータガンマ核分光の結果を組み合わせることで、Zn-79核の励起準位から一粒子的な性質を持つものを同定することに成功した。この結果からも、やはり中性子56の準魔法数は中性子過剰核では消滅し、また新たに中性子40に大きな殻ギャップが現れることが示唆された。
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