研究課題/領域番号 |
25800132
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹田 敦 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (40401286)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 暗黒物質探索 / 低エネルギー線源 |
研究概要 |
平成25年度は、1次線源から放出されるX線によって励起された2次線源からの低エネルギーX線を利用する線源の開発に関して、1次線源の強度に対する2次線源の強度の比をモンテカルロ・シミュレーションにより計算し、実際に製作可能な線源の選択及び最適化をおこなった。 その結果、1次線源として55Feを、2次線源としてTiを用いた2層式線源が現実的に製作可能であることが分かったため、実際に55Fe線源と厚み50マイクロメータのチタン箔を組み合わせた2層式線源を製作し、ワイヤーチェンバーを用いて線源から放出されるX線強度の測定を行った。 測定の結果、チタンからの特性X線(エネルギー4.5keV)が、計算値と矛盾しない強度で得られることが確認され、55Feからの1次X線(5.9keV)とも十分に分離できることが分かった。 一方、低エネルギーX線源を液体キセノン中で使用する場合に問題となる、「線源ハウジングの表面粗さが発生シンチレーション光を阻害する現象」を十分低くするための研究を進め、表面粗さを1マイクロメータ以下に抑えたステンレススチール窓を持つハウジング構造を用いて55Feび241Am線源を実際に製作した。 このうち241Am線源を、実際に小型のテストチェンバー中に満たした液体キセノン中につけて、キセノン中で発生するシンチレーション光を光電子増倍管により測定し、観測される光電子数に及ぼす表面粗さの影響の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
55Feとチタン箔を用いた2層式線源の原理実証実験に成功し、一方で線源を実際にマイナス100度Cの液体キセノン中に浸漬するためのハウジングを線源窓表面粗さを十分に低く抑えた構造で実現する手法の確立にも成功した。 チタンからの特性X線のエネルギーは4.5keVと、当初の目標である1.5keVに比べると若干高いが、暗黒物質探索に重要なエネルギー領域内であり、さらにXMASS検出器が非常に高い感度を持つアクシオン探索においても十分に意味のあるエネルギー領域である。 このことから、現在までに確立した線源を実際にXMASS検出器の較正に用いることで暗黒物質の季節変動測定を行う当初の予定が順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で確立した55Feとチタンを用いた2層式線源を、実際にマイナス100度Cの液体キセノン中に浸漬するために開発したハウジング構造で封入することで実用的な線源の製作を行う。 そして、製作した線源を用いて、暗黒物質探索用検出器(XMASS検出器)のエネルギー較正測定を行い、暗黒物質の季節変動観測を十分な精度で遂行する。 また、線源を用いて取得したデータから、検出器の液体キセノン中でのシンチレーション光の吸収長・散乱長、検出器を構成する物質との境界で生じる反射・屈折等の光学パラメータの決定を行うことで検出器の応答を詳細に理解し、暗黒物質観測を十分な精度で行うとともに、得られた結果に対する不定性を十分低く抑える。
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次年度の研究費の使用計画 |
線源のプロトタイプを製作した後の液体キセノン中浸漬テストの遂行の一部を次年度に持ち越したために、予定使用額を下回った。ただし、線源の確立を実証するために必要なテストは十分に行われており、研究プランは予定通り進んでいる。 持ち越した、テスト実験を早急に行い、当初予定通り線源の製作を完了させる。 さらに、完成した線源を実際に暗黒物質探索検出器(XMASS検出器)に使用し、検出器のエネルギースケール及び位置再構成の精度測定、光学パラメータ決定等の検出器応答の理解・不定性の低減を進め、十分な精度で暗黒物質季節変動観測を遂行する。
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