研究実績の概要 |
(1)アルファ線源とアルミ(Al)を組み合わせることでAlからの1.5keVのエックス線を 放出する線源を製作するため、モンテカルロ・シミュレーションを用いてAlの厚み等の最適パラメータを求め、実際にアルファ線源である241Amとアルミ箔を組み合わせたテスト線源を製作した。テスト線源とシリコン検出器を用いて、Alから1.5keVのX線が十分な強度で放出されること、1次線源である241Amから直接出てくるガンマ線やベータ線によるバックグラウンドが問題とならないことを実証した。これにより、1.5keV線源の実用化の目途がたった。 (2)平成25年度に製作した Fe-55 線源を、液体キセノンと光電子増倍管からなる小型検出器の中に入れて、線源から放出される 5.9keV, 6.4keV のエックス線の検出と、線源を液体キセノン環境下(約-100度、絶対圧0.16MPa)で使用しても全く問題の無い(RIの漏えいや液体キセノンの質の劣化が無い)ことを確認した。この線源を実際に、大質量暗黒物質検出器(XMASS検出器)内に入れて内部の様々な位置でデータ取得を行い、検出器のエネルギー応答や位置依存性を詳しく調べた。これにより、暗黒物質探索で重要となる低エネルギー事象に対する応答を小さな系統誤差で求めることができた。 また、5.9keVのエックス線によるエネルギー付与のうち、キセノンのL殻エックス線4.1keVが線源側に戻ることで差し引き1.8keVのみがキセノンに吸収されて検出される 1.8keV事象についても十分な統計精度で観測することに成功した。 (3)本研究で求めた検出器のエネルギー応答や低エネルギー事象に対する安定性への系統誤差を用いて、MASS検出器で実際に取得した約1年間のデータから、暗黒物質信号による季節変動探索を行った。
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