研究課題/領域番号 |
25800134
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
岸本 功 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60399433)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | modified cubic超弦の場の理論 / レベルトランケーション近似 / 古典解 / 新ゲージ対称性 |
研究実績の概要 |
修正されたcubic型超弦の場の理論の枠組みで、(フェルミオン化・ボゾン化しない)ベータ-ガンマ超ゴースト場のモード展開に基づいて、レベルトランケーション近似による数値計算を実行するためのMathematicaプログラムの開発を進めた。特に、高力-九後-国友の文献による、超弦場のNSセクターでの逆描像変換演算子の取り扱いを適用し、「新ゲージ」対称性で超弦場を8成分に帰着させて計算する方針で整備した。 このプログラムの応用の一つとして、超弦の場の理論のタキオン凝縮を表す古典解として2007年に提唱されたErler解の解析的結果の整合性を数値的に調べた。具体的には、Erler解を8成分へ変換し、そのエネルギーを評価した。その際、簡単のため運動方程式を用いて、超弦場について2次の形に帰着させたものを数値的に計算した。レベルトランケーション近似をする際、レベルの切断の具体的方法に任意性が生じるが、ここでは、新ゲージへの変換前後でそれぞれ同じレベルで切断する方法で評価した。最大レベル16まで評価したところ、レベルを上げていくにしたがって、期待される有限値から離れ発散する傾向がみられた。Pade近似およびPade-Borel近似を行ったり、BRST exactな項を差っ引いて評価しても、数値的な振る舞いはあまり改善されなかった。これは、ボゾニックな弦の場の理論のSchnabl解(2005)の数値的な収束性や、Erler-Schnabl解(2009)のPade/Pade-Borel近似の数値的振る舞いとは異なるものである。 また、cubicな相互作用項の評価のために、8成分表示を介した同様なレベル切断法による数値計算を行うと、(レベル9程度まででは)対称性があまり尊重されないこともわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
modified cubic超弦の場の理論のErler解は、その形がボゾニックな弦の場の理論のSchnabl解によく似ているため、そのエネルギーの数値的振る舞いも同様な良い収束性を示すと期待したが、調べた範囲内では、収束性が想定外に悪かった。今回の数値計算法はレベル切断の処方箋にも依存するもので、これは従来から扱いが容易でない逆描像変換演算子の中点挿入の近似に関係しているはずであり、単により高いレベルを目指すだけでなく、有効な近似法を再度模索する必要がでてきたため。
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今後の研究の推進方策 |
modified cubic超弦の場の理論のレベルトランケーション近似による数値計算をさらに進めるには、高レベルまで含めて、逆描像変換演算子の中点挿入の近似に関連したレベル切断処方依存性を詳しく調べる必要がある。 対称性をある程度保てるレベル切断の処方箋が確立されれば、高力-九後-国友により提案されたゲージ固定条件に基づく数値解を求め、その性質を調べる予定である。その際、高レベルを調べるためには、MathematicaからC++へのプログラム翻訳作業が必須である。 超弦の場の理論の研究分野において、最近、BerkovitsのWZW型のものの拡張に関する研究が活発に行われているため、その新しい枠組みの観点からも、超弦の場の理論の数値計算の具体的応用例を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年3月末の、日本物理学会第71回年次大会参加等の旅費が、次年度分扱いになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年3月末の、日本物理学会第71回年次大会参加等の旅費として使用する。差額の残りは、主に、2016年5月末-6月初めにサンパウロ(ブラジル)で開催される弦の場の理論の国際研究会に参加するための旅費の一部として、使用する予定。
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