研究課題
本研究は、独自開発した超高分解能原子核乾板(NIT)による方向感度を持った暗黒物質探索実験を目的としたプロジェクトを推進するものである。平成26年度は、これまでの実験を推進する上でボトルネックとなっていた低ノイズ現像法の開発に着手し、外部の研究者と共同で、検出器のもっとも基礎的な検出原理の理解を進めることで、これまでのノイズレベルを1/20まで下げ、かつ検出感度をほぼ100%で維持できるような現像法を開発した。この開発によって、シグナルの検出性能の定量的な評価に進むことができ、イオン注入装置を用いることで、暗黒物質探索で期待されるエネルギー領域での検出性能を評価し、現状でのエネルギー閾値70keV程度で、角度分解能350mrad.であることを評価した。また、並行して、NITのナノスケールの構造まで考慮した新たなシミュレータの構築を行い、デバイスが持つ原理的な性能と、現在の解析システムにおける読み出し性能を考慮した検出器応答のシミュレーションを行った。この結果から、まず、そもそものデバイスが持つ検出分解能は、既存の方向感度を持った暗黒物質探索実験を進める検出器が到達できないような極めて高いものであることが理解され、読み取り性能が、現状の検出性能を決めていることが理解された。また、結果として、このシミュレーションが、よく実験結果を説明していることが理解された。新たな解析法として、プラズモン共鳴現象を用いた超分解能解析法を提案し、そのデモンストレーションも進め、このデバイス独自の現象を用いることで、10nmレベルの分解能で、事象解析ができることを明らかにした。国際共同実験(主に、イタリア・グランサッソ研究所)も進め、検出器内部の微量放射性同位体の測定を行い、検出器内部から発生するバックグラウンドを定量的に抑えることができた。
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JINST
巻: 9 ページ: C01043
doi:10.1088/1748-0221/9/01/C01043
Nuclear Physics B (Proc. Suppl.)
巻: 253 ページ: 216-217