研究課題/領域番号 |
25800144
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大河内 豊 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (40599990)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 弦理論の準安定状態 |
研究実績の概要 |
弦理論の最近の進展により、弦理論の真空構造は大変複雑で、多くの準安定状態を含んでいるのではないかという仮説が持ち上がっている。この仮説を信じると、より高い真空エネルギーを持つ準安定状態から低い状態への遷移が初期宇宙で盛んに起こった可能性がある。この仮説に基づき、本研究では、弦理論の準安定状態の崩壊現象の研究を行った。特に、触媒効果による崩壊が準安定状態の寿命が大変短くなることを示した。特に、弦理論の枠組みで、バリオンの構成方法がこれまで別の観点から議論されてきたが、その研究結果を我々の議論にあてはめてみると、バリオンそのものが触媒効果を引き起こす種となることがわかった。この研究結果は論文として国際誌に発表した。バリオンの存在が準安定状態の寿命を短くすることが、多くの例であてはまるのであれば、我々の世界を準安定状態で構成した場合、その寿命の妥当性は、この触媒効果を考慮しなければ不十分であることを示唆する。この発展は、研究始めには予想していなかったことであり、大変興味深い結果である。今後は、本研究の目的に向かって、より現実的なモデルの構築を行い、そこに存在する不純物がどのように真空の寿命に影響を与えるかを調べる予定である。この研究は海外の研究機関の研究者との共同研究であり、米国滞在時に行った議論が元となり、共同研究に発展した。またこれらの成果は、国内外の研究会やセミナー講演を通じて積極的に発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
弦理論における準安定状態の崩壊に関する計算方法の見通しが立ち、計算に必要な先行研究がいくつか存在することもわかった。それを応用することで、本研究の計算が進められることが理解でき、進展が生まれた。それにより、当初見込んでいたよりも、少ない時間で論文まで仕上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より現実に近づけるために、弦理論の枠組みでドジッター時空を考えていく。その一つの例として、KKLTモデルが存在しているので、まずは、この真空の崩壊現象を触媒効果の観点から調べていく。我々が指摘したバリオンによる真空の崩壊は、このモデルでも適用することが可能であり、同様の現象が起こると期待できる。弦理論のランドスケープの概念に、新たなひとつの物理的要素を付け加えることになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間途中で、研究機関の移動があり、その分当初予想していたよりも、研究に遅れが生じた。その遅れがそのまま引き継がれている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、国際研究会での発表及び共同研究者との打ち合わせを積極的に行うため、多くの旅費を見込んでいる。また研究発表等で必要となる物品も購入予定である。
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