研究課題/領域番号 |
25800147
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
深谷 英則 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70435676)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 格子QCD / カイラル摂動論 |
研究概要 |
CERN の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)におけるヒッグス粒子の発見により、素粒子理論における、従来の素粒子標準模型の検証がますます重要な課題となっている。本研究の目的は、そんな素粒子標模型の検証の一翼を担う格子ゲージ理論数値計算の精度を最大限に高めることにある。特に大きな障害になると考えられている、有限体積による系統誤差をいかに抑えるかということに注目している。今年度は、この目標に向けて、意味のある一歩を踏み出すことができた。パイ中間子の電磁気形状因子の抽出に必要となる擬スカラー-ベクトル-擬スカラーの3点相関関数について、共同研究者である大阪大学の大学院生鈴木貴志氏とパイ中間子有効理論の解析を進めた。3 点のうち、2点の演算子に運動量を挿入することで、定数項が消去できることを確認し、さらに 適当な比をとることで、空間依存性を持っている関数の係数に対するパイ中間子ゼロ運動量状態の寄与を相殺することを確認した。さらに1-loop の補正計算を実行、実際に補正の寄与が小さくなることを示した。これにより、パ イ中間子ゼロ運動量の寄与を抑えることで、4fm 程度の格子QCD 数値計算でも、有限体積効果を数%程度に抑えられることを示した。これは従来の見積もりよりも小さく、パイ中間子ゼロ運動量状態を抑えることの重要性を示す、意義のある結果であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究成果により、研究目的である1%程度の精度でパイ中間子の形状因子を抽出するには、4fm 程度の格子による数値計算があれば、可能であることを示した。これは従来考えられてきた見積もりよりも小さく、パイ中間子のゼロ運動量モードの寄与を抑えることの重要性を示すものである。実際に1.8fm の格子QCD数値計算結果も解析、この大きさでは系統誤差が10%を超えてしまうものの、その誤差の範囲で実験値との一致が確認された。現在進めているより大きな格子QCD数値計算に期待が持てる結果である。これらの結果については、1本国際会議報告を発表、現在2本の学術論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
バリオン (陽子、中性子など) や、重いクォーク (チャーム、ボトムクォー ク) を含む中間子など、より複雑な系への応用を試みる。有限体積効果は、バリオンや、D, B 中間子そのものの量子効果ではなく、それと結合 しているパイ中間子が担うはずである。これらの重い粒子は外場として理論に挿入しなければならないという非自明な困難が予想されるが、これまでの知見を生かし、様々な手法や理論を総合して、正確な物理量の抽出に結びつけたい。
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