研究課題/領域番号 |
25800147
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
深谷 英則 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70435676)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 格子QCD |
研究実績の概要 |
CERN の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で Higgs 粒子が発見されたが、その振る舞いは素粒子標準模型と無矛盾である。一方、暗黒物質やニュートリノ振動の実験結果により、標準模型を超える新しい物理の存在も確実と言える。このような状況では、素粒子実験、理論の双方を用いて、素粒子標準模型を精密に検証し、実験と理論のわずかな差異を探ることで、新しい物理への糸口をつかむ、ボトムアップ型の研究がますます重要になる。本研究の目的は、強い相互作用を記述する量子色力学(QCD)を精密に理論計算するため、格子QCD数値計算の主要な系統誤差である有限体積効果を精度よくコントロールすることにある。
平成27年度は、JLQCD共同研究において、D中間子の崩壊過程に関する形状因子について研究を進めた。この形状因子は、新しい物理の発見が期待されている、カビボ小林益川行列要素の検証に不可欠な物理量である。私たちは、カイラル対称性を保ち、かつ精細な格子間隔での数値計算を可能とするメビウスドメインウォールフェルミオンを用いた数値シミュレーションを行い、2.5% 程度の精度を達成できることを確かめた。現在、有限体積効果を検証すべく、より大きい格子における数値計算を進めているが、当初の予定より遅れが生じたため、研究期間の延長を申請、受理された。
一方、有限体積効果で最も懸念されているトポロジカルチャージのゆらぎについて、そのゆらぎからエータプライム中間子の質量を計算できるという新しい手法を開発、Physical Review D に発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
D中間子の崩壊過程に関する形状因子の大きな体積の格子計算に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
複数の体積でD中間子形状因子の計算を行い、高精度で小林益川行列の決定を行う。1年程度で遂行可能であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画であった多様なハドロン(特にD中間子)の形状因子の大きい格子での数値計算に遅れが生じているため。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年7月にイギリスのSauthampton 大学で行われる、34th International Symposium on Lattice Field Theoryに出席、研究発表のための旅費として支出予定である。
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