研究課題
研究の最終年度である平成28年度には、本課題で開発した大面積偏極陽子固体標的を用いて、理研RIビームファクトリーにおいて加速器実験を遂行した。測定したのは、典型的な中性子ハロー核であるヘリウム6と偏極陽子の弾性散乱のスピン非対称(スピン偏極軸が上向き/下向きの場合の、左右の散乱確率の非対称)である。ビームのエネルギーとしては、反応機構が最も単純となる核子あたり200MeVを用いた。ヘリウム6は同じ質量/電荷比を持つ三重陽子から良く分離され、90%以上の純度のビームとして標的に5日間照射された。実験にあたっては、従来の直径14mmから24mmに大口径化した偏極陽子固体標的をRIビームファクトリーのSAMURAIビームラインに設置し、散乱された陽子を左右に設置したドリフトチェンバー、プラスチックシンチレータ、NaI(Tl)シンチレータで測定した。散乱されたヘリウム6粒子は大立体角をカバーするSAMURAI磁気分析器で運動量分析し、分解反応で生じたヘリウム4や標的中の炭素によるイベントから陽子弾性散乱イベントを分離した。また、スピン非対称が既知であるヘリウム4-陽子散乱のデータから標的の偏極度を測定するため、ヘリウム4ビームによる散乱測定も行った。標的には、新たに開発した556nmの波長を持つレーザー、545nmのレーザー、及び既存の514nmのレーザーの3種類からのレーザー光を照射し、スピン偏極を生成した。スピン非対称の測定のために、偏極軸は実験中に2回反転し、検出器による見かけ上の非対称をキャンセルした。現段階のデータ解析では、弾性散乱イベントが良い信号雑音比で選別され、微分断面積も実験前の予想と矛盾しない値が得られており、正しくデータが得られていることが確認された。スピン非対称のデータ解析は現在進行中である。
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