研究課題/領域番号 |
25800158
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
安倍 博之 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (10402760)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 素粒子統一理論 |
研究実績の概要 |
超弦理論の低エネルギー有効理論としても現れることが知られている10次元超対称非可換ゲージ理論において、余剰6次元に対し特定の背景磁場が存在する平坦な周期的空間を想定して次元縮減を行うことにより、その4次元有効理論として得られるクォーク及びレプトンが3世代の超対称標準理論の現象論的な解析を行った。モジュライと共形アノマリーによる伝達に加えゲージ伝達の寄与もすべて取り入れた一般的な超対称性の破れの項を導入して、観測されているヒッグス粒子の質量を再現可能なパラメター領域における超対称粒子の現象論的性質を同定し、これら一連の成果を公表した。一方で、出発点となっている10次元のゲージ理論を拡張し、超対称標準理論のセクターと超対称性を自発的に破るセクターが同時に現れるような背景磁場の配位の探索も並行して行い、幾つかの具体的な配位を同定した。これらの成果は公表準備中である。前年度に引き続いて得られた以上の成果は、様々な観点から素粒子統一理論の有力候補と考えられている10次元超対称非可換ゲージ理論の現象論的側面を照らす大変興味深い結果であると考えている。また、上記の研究とは独立なボトムアップ・アプローチとして、4次元超重力理論における超対称性の破れの効果が宇宙論に及ぼす影響を明らかにする研究と、5次元超重力理論における現実的なインフレーション模型の構築に関する研究を行い成果を公表した。これらは素粒子統一理論の模型構築において重要となる超重力理論の現象論的及び宇宙論的性質に関する理解をより一層深める重要な成果であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の中心となっている背景磁場の模型に関して、前年度末にその一部を転換した新たな方策に従い、超対称性の破れの構造を最も一般的な形に選んだ場合の現象論的解析と並行して、破れのセクターの具体的な導入方法の検討を行った結果、研究実績の概要に記載の通り、双方で相当数の成果が得られたため、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現実的な素粒子模型を実現可能なものとしてこれまでに同定した背景磁場の配位と整合するようなインスタントン等の非摂動効果の解析を行い、摂動的には現れないが現象論から要求される各種の質量項やモジュライのポテンシャルがこれらの非摂動効果により生成される場合には、これらが関与する現象論の詳細解析や、モジュライ固定とその宇宙論への応用について研究を行う。一方で、これらが生成されない場合には背景磁場をより一般的な配位へと拡張し、必要な項が現れるための条件を調べる。最終的にこれまでの成果を総合し、最も有望な背景磁場の配位に対する素粒子現象論と宇宙論の研究を可能な限り包括的に実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当該分野の主要な国際会議がすべて7月までに開催され、本研究費による研究活動以外の職務との関係でこれらの会議への参加を断念せざるを得ず、実際に要した旅費の内訳が当初の見積もりとずれたことにより全体の内訳を調整したため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内旅費に使用する。
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