研究課題/領域番号 |
25800165
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
渡辺 丈晃 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (00415043)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | K稀崩壊実験 / 中性K中間子 / CP非保存 / KLビームライン / ハドロン実験 |
研究概要 |
ハドロン実験ホール拡張を想定した新しいKLビームラインの概念設計、取り合いの調整および真空窓などの基礎計算を進めている段階である。 懸案の1つであるビームコリメータの測量システムであるが、1次ビームラインと実験エリア間の空気遮断のため2重の強固な空気隔壁をKLビームライン上に設置する必要があることがわかり、直線の光路をビームコリメータと平行、もしくは連結した形で通すことが極めて困難であることがわかった。そこで、ビームコリメータの上流部と下流部に遠隔操作によりビームライン上へ出入可能な測量標的装置を取り付けることで、ビームホールを通じた形で直接測量可能なシステムの設計を進め、現実的な設計まで落とすことができた。 また、現在のKL実験ではビームラインと測定器の間には真空区画を分けるための薄い真空仕切膜が入っているが、モンテカルロシミュレーションにより、KL粒子が膜で散乱し横方向運動量が増加することで、背景事象の候補となる潜在的な可能性があることが新たに判明した。その効果を実験的に確認するために、厚さを1/10に減らした仕切膜の設計を進めており、H26年度に実際に製作してビームライン上へ取り付けてデータ収集を行うことを予定している。また、このStudyより新しいKLビームラインにおいては、真空仕切膜が必要ないようビームライン側も測定器と同レベルの超高真空対応仕様へ変更することとした。 最後にハドロン実験施設に対する安全基準がH25年度中に大きく変更されたことを受け、KLビームラインの設計も安全基準に適合するよう基本設計の修正を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
H25年5月にハドロン実験施設では放射能漏洩事故が発生し、事故対応のため研究遂行が困難な時期が存在し、またその影響で各種試験を行おうとしていた実験ホールが使用できない状況のため測量機試験などは実施できなかった。また、事故を受け、多くの安全規則が見直され、本研究で設計を進めているKLビームラインについても、安全上の評価や追加措置が必要となり、その設計にも時間を要している。 また、私的な事情によるものであるがH25年12月に私の子供が手術をうけたため、看護のため研究遂行が困難な時期(H25年11月後半からH26年2月末)があった。
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今後の研究の推進方策 |
目標とするところは変更せず、ハドロン実験ホール拡張時のKLビームラインの現実的な設計案構築を目指している。 そのために、まず全体設計としては、安全対策まで含めた形で設計を見直している段階であり、配置も含めてベースライン図面の更新を行う予定である。測量システムは、コリメータ側の測量標的装置はH25年度中の設計を完了しており、もう1つのキーである実験エリア側に置かれる測量機側の運用方法の検討および測量機の試験を行う。また、H25年度中のシミュレーションで判明した真空仕切膜やビームパイプでの散乱事象などの調査を、物質量を変更したものを製作し実際にビームにより評価したい考えである。また、予算的に余力があった場合は、実験エリア側に置かれるビームプロファイルモニタの設計や一部試作・評価を行いたい考えである。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、ハドロン実験施設の拡張を想定したKLビームラインの設計を行うことが目的であるが、平成25年5月にハドロン実験施設では放射能漏洩事故が発生し、その影響で予定していた測量試験が実施できず、また安全対策のため、ビームラインの設計が根本的に見直されている段階であり、KLビームラインの基礎設計にも大きく影響を及ぼした。H25年度末には、安全基準も明確化してきたこともあり、具体的な設計に着手しつつあるのが現状であり、各種試作・評価や測量試験などの予算の執行必要とする研究はH26年度に行うよう使用計画の変更を行った。 現在コリメータ測量試験を検討中であり、それに係わる装置、消耗品、役務経費の執行を平成26年度の前半に行う予定である。それと並行してビーム性能に直結し、かつ設計の難しい部分の1つであるビーム窓(真空窓)の基礎評価を平成26年度の前半中に進めたい考えである。平成27年1月にはビーム運転が再開される可能性があるため、それまでにビームライン真空と測定器真空の間にいれる真空仕切膜について、現状の1/10の厚さの薄い仕切膜の製作を行い、実際にビームによるデータ収集および評価を行いたい考えである。また、下流ビームパイプにおいてもビームパイプ中での2次粒子の散乱により測定器効率の低下の可能性が指摘されているため、可能であれば物質量を低減したビームパイプの製作を行い、実際にデータ収集および評価を行いたい考えである。
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