研究課題/領域番号 |
25800168
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
早藤 麻美 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 基礎科学特別研究員 (80632314)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / X線天文学 / X線偏光 |
研究概要 |
本研究の目的は、X線偏光計をロケットに搭載し、X線天体の偏光観測を世界に先駆けて成功させることである。申請のベースとなっているNASAのXACTロケット実験計画では、2013年度に「カニ星雲」2014年度に「さそり座X-1」の観測を予定していたが、予算の関係上スケジュールが遅れ、打ち上げはまだ行われていない。代わりに、同じくX線偏光観測衛星のGEMSプロジェクトの再提案を進めるとともに、偏光計はすぐにでもロケットに搭載できるよう、性能試験と改良を進めている。 2013年度に行って来た内容は、主に以下の4つである。(1) ロケットに搭載する予定のX線偏光計と同タイプの偏光計の較正試験を、Brookhaven National Laboratory のNational Synchrotron Light Source を利用して行った。2.3-10 keV のエネルギー領域で13の単色X線を、偏光計の5つの異なる場所に照射し、偏光測定性能を検証した。4 keV 以上のエネルギー帯ではシミュレーションと一致する結果を得たが、4 keV以下では diffusion の影響により、設計の改善やより詳細なデータ解析方法が求められる結果となった。(2) これらの改善も含め、NASAと平行して偏光計のクロスチェックが行えるよう、理研にて新たなX線偏光計を、偏光測定が可能なところまで立ち上げた。(3) 同時に、偏光計のキャリブレーションには欠かせない Modulated X-ray Source も日本で立ち上げ、安定して運用できるようにした。(4) また、これまで詳しく検証されていなかった偏光計の宇宙での耐用時間の調査を行い、結果として耐用時間は運用に対して十分であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の計画の中で、これまでに特に進展している点は、偏光計の制作/改良である。具体的にはBNLでの偏光計の試験を無事に終え、その性能がほぼ予測通りの結果であったこと、改良を含むもう1台の偏光計を日本で立ち上げ、試験の準備を終えたことである。一方で遅れている点は、NASAでのXACTロケット実験のスケジュールが伸び、打ち上げが先送りになっていることである。総合して、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
X線天体のいち早い観測を目指す本研究では、なによりも偏光計を宇宙に上げることが先決である (天体からのX線は大気吸収によって地上では観測できないため)。よって今後はふたつの軸を掲げ研究をすすめる。(1) XACTロケット実験の打ち上げはNASAのスケジュールに従う形ではあるが、偏光計をロケット打ち上げのスタンバイ状態にもっていく。(2) 同じ偏光計の衛星計画であるGEMSプロジェクト再提案が2014年末に予定されている。偏光計の性能評価の中でも、これまで示せていなかった、本来の観測条件であるX線ミラーと組み合わせて天体を観測したときのフィジビリティーを、追加の評価試験を行って示していく。これには、理研で立ち上げた偏光計で行う試験も含む。
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次年度の研究費の使用計画 |
NASAのXACTロケット実験における打ち上げのスケジュールが延期になり、その旅費や成果報告に必要な経費を使わなかったことが主な原因である。加えて、研究代表者が2013年度内に産休/育休で数ヶ月の休暇をいただいたことも加えたい。 理研で立ち上げた偏光計の性能評価試験に必要な物品。および国内(SPring8)での偏光計のビーム実験に必要な物品、実験メンバーの旅費、成果報告。
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