研究課題
若手研究(B)
本研究では量子ドット等を用いた新しい局所プローブを用いて半導体微細材料中の局所電子状態およびその物理現象を調べた。本年度は特に量子ホールエッジ状態における局所電子状態およびエネルギー緩和の測定、および量子ドットプローブの高速化を行った。量子ホールエッジ状態は、長い緩和長や良く定まった方向性を持ち、固体電子素子や、量子情報処理への応用が提案されている。この応用に向けては、量子ホールエッジ状態の局所的な電子状態、また内部のエネルギー緩和を理解することが重要となる。我々はこの局所電子状態、エネルギー緩和を量子ポイントコンタクトを使って測定できることを示し、またこの測定手法を量子ホール領域におけるホットスポットに適用した。特に本年度は実験結果の解析を重点的に行い、量子ポイントコンタクトを用いてエネルギー緩和を測定できるメカニズムとして、電子温度勾配により生じる電位が寄与する過程が考えられることを示した。また半導体微細材料を用いた情報処理デバイスの高速化、高効率化のためには、局所電子状態の静的な特性だけでなく、そのダイナミクスの理解が重要となる。近年、QPC等を用いた電荷検出器を高周波共振回路に組み込み、高周波の反射測定を行うことにより、量子ドット中の単一電荷を高速(μsオーダー)で読み出すことが可能となっている。この読み出し時間は、電子スピンの緩和時間よりも短くなっており、アンサンブルでない単一の電子について量子状態が緩和する前に測定を完了するというこれまでの電気測定では不可能であった測定が可能である。実際にこの技術は量子情報処理に向けた多重量子ドット系の測定に用いられるようになっており、また量子ドットプローブの高速化を行う上で重要となる。本年度はこの高速読み出しに必要な高周波変調、測定系を構築し、量子ドットプローブの高速化を行い測定時間の評価を行った。
3: やや遅れている
作製した半導体微細構造試料の特性不良により、局所スピン偏極測定の実験に一部遅れが出ているため。
当初の計画に則って平成25年度の研究内容をさらに深めつつ、シングルリード量子ドットを用いた半導体微細構造中のスピン現象の研究を進める。また半導体微細構造試料の特性向上のため、試料構造およびプロセスの変更による対応を行う。
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Applied Physics Lettters
巻: 104 ページ: 113109-1 -4
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Journal of the Physical Society of Japan
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http://tomootsuka.net/