研究課題
若手研究(B)
本研究は5fs以下のパルス幅を持つレーザーを用いて、カーボンナノチューブの電子状態をコヒーレントに励起し、その緩和時間など、コヒーレントなダイナミクスを計測することを目指したものである。そのために、平成25年度は、炭素系材料のコヒーレント電子状態を作成するための光パルス成型技術の構築と、カーボンナノチューブの超高速コヒーレントフォノン分光測定を行った。まず、光パルス成型技術に関しては、空間位相変調器を用いたサブ5fsレーザーパルスの波形整形を行い、パルス列など、これまでに実現が難しかった励起パルスを作成することに成功した。また、同じレーザーを用いて20 fsのパルス幅の確認と、それを用いたビスマスのコヒーレントフォノン計測に成功した。このパルス幅はスペクトル幅から予想される最短パルス幅(5fs)よりも非常に長いので、今後は、系の調整を行い、最短パルス幅を得たうえで、カーボンナノチューブの電子状態制御を目指す。コヒーレントフォノン分光測定においては、イオン液体にカーボンナノチューブを浸して、電圧を印加することによって、電子状態を大きく変調し、それによって、コヒーレントフォノンがどのように変化するかを測定した。その結果、電子格子相互作用の強いいくつかのフォノンモードが振幅、周波数、位相を大きく変えることを見出した。この結果は、カーボン系の電子格子相互作用のダイナミクスを理解するうえで非常に重要である。また、これらのフォノンモードの周波数が時間的に変化していくことも同時に見出した。また、プローブ光のスペクトルを分解することで、共鳴の寄与など電子格子相互作用を詳細に議論できることを見出した。これらの成果は本年度に論文にまとめ、国際学会などでも発表する予定である。
2: おおむね順調に進展している
電子状態のコヒーレント制御に向けた、波形整形技術の構築が行え、後は調整によって時間分解能を上げていくのみとなっている。このことは、サブ5fsレーザーを用いた電子状態制御技術の構築に一歩近づいたことを意味している。また、これまでの継続でサブ10fsレーザーを用いたコヒーレントフォノンの研究では、新しい興味深い研究結果が表れてきており、こちらはかなり順調に進展していると思われる。よって上記の評価とした。
今後は、構築した波形整形技術を用いて、カーボンナノチューブの電子状態制御に向けた研究を行っていく。そのためには、現状で時間分解能20fsしか得られていない部分を系の調整によって改善し、ポンププローブ分光法へと応用していく必要がある。また、より短パルスのパルス幅を実現するために、非線形ファイバーや、光第二高調波発生などの非線形過程を通して、どのような条件を用いれば効率的に短パルスを実現できるかを明らかにしていく予定である。さらに、これを用いた超高速分校法を行い、超広帯域、超高時間分解能の実験を行う。これらを通して電子状態のコヒーレント振動を観測することを目指す。
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