研究概要 |
機能性金属酸化物のナノ構造化による高機能創出を目的として、対象物質の成長位置、形状、サイズを3次元方向全てで精確に制御して作製する独自ナノ超構造創製技術「3次元ナノテンプレートPLD法」を確立してきた。3次元ナノテンプレートPLD法により線幅を精密に制御して室温強磁性半導体(Fe,Zn)3O4 (FZO)単結晶ナノウォール細線構造を実施し、その断面透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った。TEM像より、FZOナノウォールが基板である3D-MgO側面から面内方向にエピタキシャル成長しており、高品質な結晶構造を有していることがわかった。この手法では、任意形状の選択、面内で厚みを制御したナノ構造の作製も実現できる。同手法で、ナノレベルで精密に空間制御し、自在にサイズを調整したナノ超構造体:巨大磁気抵抗効果を示すペロブスカイトMn酸化物(La,Pr,Ca)MnO3 (LPCMO)ナノボックス構造の創製にも成功した。硬X線光電子分光を用いた電子状態解析から、ナノボックス試料では通常の薄膜試料より50 K以上高い温度から絶縁相への転移が生じることを明らかにした。転移点の上昇は3次元ナノ構造形状に由来することが示唆され、ナノ構造化が遷移金属酸化物のエレクトロニクス機能開拓・特性向上に有用であることを示す成果である。更にデバイス展開に最適な構造である、線幅50 nmの(La,Pr,Ca)MnO3ナノウォール細線構造を創製し、電気特性評価を行った。バルクや薄膜試料では見られない抵抗の急峻な変化:デジタル磁気抵抗が発現すること見出された。ナノ細線では薄膜には見られない急峻なMR変化が現れた。これはsub-100nmのサイズを有する単一電子相をナノウォール細線中に閉じ込めたことにより、単一電子相の相転移を直接的かつ効率的に検出できたことに由来すると考えられる。
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